人口1万人の町に2万人の観客が集まる、北欧最大のワールド・ミュージックの祭典〈フォルデ・フェスティバル〉をレポート!
夏といえばフェスティバル。筆者もノルウェー西海岸フィヨルドエリアの小さな町で行われるフォルデ・フェスティバルに行ってきました。フォルデは、スカンジナビア半島最大のフォーク/ワールド・ミュージック・フェスティバルで、1990年からスタートした歴史あるフェスティバルです。毎年約250人の演奏者が20〜25カ国から集まり、普段は1万人程度の人口の町に2万人の来場者を集めます。
そして! フェスと言えば、いったい何本ライブを見られるか。それが勝負なのは、みなさんもご存知かと思います。筆者もマジックとノルウェー語のプログラム(何が書かれているか想像するしかない!?)を見ながら、必死でスケジュールを調整。
時差ぼけもきつく還暦の老体には辛い……。
でも音楽を聞けば、とたんに元気に!
というわけで、見たアーティストの皆さんを順番にご紹介していきたいと思います。題して夏フェス18本ノック!?
①Rastak(イラン)

30年近く続いているというイランのグループ。現在はイスタンブールを拠点に活動。シンガーが2人いて、特に白髪のお父さん風年配シンガーさんが歌うとハッとするようなヴィヴィドさがあり、その世界に引き込まれる。
公式サイト:https://rastakmusic.com/

②Áhpparas(ノルウェー)
サーミのシンガー・ギタリスト、Viktor Govasli Wilhelmsenをフロントにしたトリオ。3人のインタープレイが素晴らしい。ジャズだな、こりゃ……。
公式Facebook:https://www.facebook.com/viktor.wilhelmsen/

③Kinnaris Q(スコットランド)
スコットランドはグラスゴーをベースに活動する女性4人組。フォルデは毎年ケルト枠があるけど、何せケルト音楽ばかりに40年近く関わってきた筆者を満足させる新しいバンドにはなかなか出会えないのだよ。……と、斜に構えていたのだけど、どうして、どうして悪くなかった。こういう編成だと、上物はともかくバックアップである下半身が弱いことが多いのだが、低音もがっつり、しっかりしている。どうやらギタリストがリーダーらしい。納得。
公式サイト:https://www.kinnarisq.com/

④Sam Lee(イングランド)
ご存知来日したこともある英国の伝統音楽の良心。相変わらずの立ち姿の美しさよ(サムはダンサーでもあるのです)、凛としたテナー・ヴォイスにうっとり。
公式サイト:https://samleesong.co.uk/

⑤Caamaño & Ameixeiras(ガリシア、スペイン)
2021年に出したデビュー・アルバムが、数々のアワードを受賞した話題の女子2人組。フィドル&歌、アコーディオンという編成。たった2人のステージなのに世界観バッチリ。最近の若い子は、しっかりしている……。
公式サイト:https://www.caamanoameixeiras.com/

⑥La Perla(コロンビア)
今年のフォルデは女性バンドの活躍が目立つ。コロンビアのこちらのトリオも全員女性。スナーキー・パピーとも共演したことでも知られる。結成10年ほどのキャリアだそうだが、シャープなリズムに心も踊る〜。
公式Facebook:https://www.facebook.com/laperlabogota/

⑦Amira Medunjanin(ボスニア)
舞台での佇まいからなにから、もう絶対に〈社会派〉だと思わせる存在感に圧倒された。見た目も手伝って〈ボスニアのおトキさん〉とでも呼びたくなる。自国では〈ボスニアのビリー・ホリデイ〉と呼ばれているらしい。彼女のアルトな声も最高だが、バンドが恐ろしく上手い! そして実際、彼女自身も〈どう、私のバンド最高でしょ?〉という空気をまといながら気持ちよさそうに歌う。優しくも力強い音世界に圧倒されてしまった。
公式サイト:https://amiramedunjanin.com/

⑧Håkon Høgemo & Erlend Viken(ノルウェー)
地元北欧勢も負けてないよ! 特に2,000人規模の大きなステージで派手なステージングが展開されるオープニングコンサートに出演したHåkon Høgemo & Erlend Vikenのデュオはとても印象に残った。この地方を代表する楽器ハルダンゲル・フィドルを演奏する男性2人組。地味だ。地味すぎる。でも楽器の音を確かめるようにぐっとボディに顔を寄せ目を瞑って演奏する師匠と、その師匠から視線を外さず、時にはエフェクターを多用しながら演奏する弟子というコンビ。この2人の伝統音楽に対する真面目なアティテュードにはすっかり参ってしまった。

⑨Almir Meskovic &Daniel Lazar(ボスニア&セビリア)
公園で楽しい子供向けのモーニング・コンサートを行ったボスニア出身のフィドル奏者と、セビリア出身のアコーディオン奏者。それぞれ留学してきたノルウェーの音楽学校で2人は出会いデュオ結成した。そんな話を聞くと、音楽に不可能なことはないのかもしれないと思ってしまう。やはりバルカン半島は音楽の宝石箱だ。
公式サイト:https://www.almirdaniel.com/

⑩Daughters Of Donbas(ウクライナ、カナダ)
ロシアによるウクライナ侵攻が長引きすぎる中、ジャーナリストとしても活躍中のマリチカが中心となり結成されたグループ。日本にも半年くらい前に来日し話題となった〈ドンバスの娘たち〉。ここフォルデでも元気な姿を見せてくれた。美しいストリングス・アレンジとともに紡ぎ出される音楽は聞く者の心を揺さぶる。
公式Facebook:https://www.facebook.com/p/Daughters-of-Donbas-61572669756771/

⑪Frikar - Voluspå(ノルウェー)
ダンスとアクロバット、そして伝統音楽で紡ぐ北欧神話の世界。思いのほかハイ・クオリティーなパフォーマンスで、びっくりした! 言葉はもちろんまったく分からないのだが、スタジオジブリの影響を思わせる巨大な白い狼が現れたり、天井から吊るされたロープを使った迫力の演技に息をのむ。
公式サイト:https://www.frikar.com/

⑫Jawa(シリア)
シリア内戦によって存続がおびやかされているスーフィーの音楽を現代に伝える意欲的なグループ。キャッチフレーズは〈古代都市アレッポの最後の吐息〉。もちろんダービッシュのクルクルと回転するダンサーが登場するのだが、彼の腕の動きから指先に至るまでの魅力にはやられた。
公式サイト:https://muziekpublique.be/artists/jawa/

⑬Parveen & Ilyas Khan(インド)
インドで7代続くという音楽一家に育ったこの姉弟デュオにはびっくり! レコーディングはまだないようだが、YouTubeには多くのクリップが上がっている。フランスを拠点に活躍しているそうで、お互い別のバンドで活動していたが、ここ5、6年一緒に活動するようになったという。古典でしっとり始まったと思ったら、なんと後半はヒューマン・ビートボックスで観客を大いに沸かせた。圧巻。
公式Facebook:https://www.facebook.com/parveenkhanilyaskhan/

⑭Seckou Keita(セネガル)
オマール・ソーサのバンドなど今やワールドワイドに活躍するセクですが、なんと彼のアフリカ外における最初の公演はここフォルデだったそう。その公演から早30年。初代フェスティバル・ディレクターが、花束を持ってかけつけ、会場も暖かい拍手に包まれた。
公式サイト:https://www.seckoukeita.com/

⑮Rydvall Mjelva Carr(ノルウェー、スウェーデン)
今回のフェスティバルで個人的にもっとも気に入った、北欧の〈楽器に愛された男たちトリオ(勝手に命名)〉。ニッケルハルパという音階のキーのついた不思議な形のスウェーデンの弦楽器、そして共鳴弦も美しいハルダンゲル・フィドル、ノルディック・ブズーキといった編成で、ひとつの音の塊となってうねるようなサウンドは、トリオ時代のヴェーセンを思わせる。ちなみにブズーキのAle Carrは、ドリーマーズ・サーカスのメンバーとして9月に来日を控えている。こちらはクラシックのヴァイオリン奏者で昨年レオニー・ソニング音楽賞を受賞したルネ・トンスゴー・ソレンセン(Danish String Quartet)が参加しているグループとしても注目だ。
公式サイト:https://rydvallmjelvacarr.com/

⑯Gasper Nali(マラウィ)
実はYouTubeで動画を見て以来、最高に楽しみにしていたのが彼。不思議な1本弦の巨大楽器を操る。パーカッションとギターのトリオで登場し、始終ご機嫌なサウンドで会場はダンスフロアに!
公式サイト:https://gaspernali.com/

⑰Qvam / Plassen(ノルウェー)
先に見たFrikar - Voluspåのステージで、氷の女王様役をやっていた女性シンガーと、ギタリストによるデュオ。結成2年目でアルバムも1枚しか出ていないが、息のあったコンビネーションを聞かせた。これぞノルウェー。
公式サイト:https://www.synnoveplassen.com/

⑱Tarabband(イラク)
同じく女性シンガー、でもまったくタイプは違うのが、イラクの女性シンガーをフロントにスウェーデンで活躍するTarabband。彼女以外はスウェーデン人というバンドはパーカッションが2人いて、シャープな音作りが身上だ。彼女の堂々たるドラマティックなステージに圧倒された。
公式サイト:https://tarabband.com/
と、こんなに頑張ってライブを観て回ったのに、へとへとになって帰宅し、フェスティバルのソーシャル・アカウントを確認したら、自分の気づいてなかった楽しそうなコンサート、知らないイベントが山のように掲載されていたのだった〜っっ! ガッテム!!?
とはいえ、短期間でこれだけのバンドを見ることが出来たのは、やっぱり嬉しい。今年のフォルデ・フェスティバルのテーマは〈平和! FRED!〉だという。まさに世界平和は音楽から。
皆さんも残り少ないフェスティバル・シーズン、満喫してください。でも決して無理はしないでね。