©Julien Mignot

新たなる人生を楽しみ、ベートーヴェンを生ききる

 エベーヌ四重奏団が、岡本侑也をチェリストに加えて2度目の夏、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏に乗り出した。2020年をめぐる前回に続き、次なるベートーヴェン記念年の2027年を臨み、心機一転のトライアルだ。

QUATUOR ÉBÈNE 『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7~9番、第13番(大フーガ付き)』 Erato/ワーナー(2026)

 「ユウヤにとっては新しいレパートリーだけれど、それでも彼がいると安全ですし、よりよくベートーヴェンを演奏できると思う。私たちも成熟したし、さらにソリッドになりましたからね」と第1ヴァイオリンのピエール・コロンベは微笑んだ、「いまや新しい人生を楽しんでいる。作品と音楽の喜びに集中できるのは素晴らしいことです」。「彼らのベートーヴェンのアルバムを何度も聴いて圧倒されていたんですけれど、いざ一緒に弾いてみると、いろいろな新しい解釈が生まれてきて、またぜんぜん味の違う演奏が出来つつあるんじゃないかなと思います」と岡本侑也は言う、「モダンな解釈や響きを要求されることはベートーヴェンについても多いので、もともと自分と共通したサウンドのイメージがあって、お互いによく共感できます。人間が体験できるすべての感情に満ちているのがベートーヴェンの完全さ。彼がいまの世界情勢をみたら、どんなふうに思われるだろうなと考えたりもします」と岡本は言う。「クァルテットを〈変える〉というよりは、私たちにいままで足りなかったものを、彼とともにさらに〈加える〉ことができる。伝統的様式観と鋭い現代性を融合することも、彼とならたやすいですし」と創設メンバーのコロンベは語る。

EBENE QUARTET, BELCEA QUARTET 『メンデルスゾーン&エネスク:弦楽八重奏曲集』 Erato/ワーナー(2026)

 岡本が加わって最初のアルバムは、ベルチャ弦楽四重奏団と日本ツアーも経てのシューベルトとエネスクの八重奏曲となった。「まったく違う方向性をもつクァルテットで、アプローチは異なります。8人の異なる性格のエネルギーを感じながら、ふさわしい場所とバランスを見出すのは難しかったけれど、結果には満足です」とコロンべ。「音楽のつくりかたの過程は違うのですが、到着点は同じ。みなさん素晴らしい方々で、8人の親密な繋がりや信頼というのも音楽に出ているかなと思います」と岡本が言葉を継いだ。

 それ以前にも共演盤やジャズ・アルバムが続いていた。「ユウヤの音はシューベルトにぴったりだから、第15番など、いつか録音もしたい。もしかしたらグリーグと組み合わせて」とコロンベも言うが、次作は弦楽四重奏とエレクトロニクスの融合で、グザヴィエ・トリボレとのアルバムになる模様。ニュー・ライフでも依然留まるところを知らないエベーヌだ。