Photo by Kayo Sekiguchi

2024年4月21日にデビュー40周年を迎えたTM NETWORKが、〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~〉と題したアリーナツアーを開催した。同ツアーより、神奈川・Kアリーナ横浜にて行われたファイナル公演のライブレポートをお届けする。 *Mikiki編集部


 

生成AIまでも活用した最新のTM NETWORK​のライブ

実は、5月19日とは、TM NETWORKが終了した1994年の東京ドーム公演〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉からちょうど30年目となる。

もしかしたら今回初めて、生でTM NETWORKのライブを観たオーディエンスは大勢いたかもしれない。ここ最近のツアーでは敢えてホールツアーを巡るなど、ファンダム=コアなFANKS(TMファンの総称)によるチケット即完状態が続いていた。若き平成FANKSも増え、開演前から、待望感という名の熱量が凄まじかったのだ。

ファンネームである〈FANKS〉と、この2年間の活動のキーワードと言える〈intelligence Days〉を冠した本ツアー。開演前、会場にはTMデビューと時代をともにした80s洋楽ポップスが流れ、期待感が高まる。

TM NETWORKのライブといえば映像演出などオープニングに凝ったイメージがあった。しかし定刻が過ぎ、暗転直後、なんの前触れもなく、代表曲“Self Control”のイントロダクションが2万人キャパシティーの会場に鳴り響いたのである。

驚きだった。宇都宮が右手をまっすぐ天へ掲げる名シーン。鳥肌ものの光景だ。オープニングからフルスロットルに盛り上がるオーディエンス。

場面は一転し、可変式ドットミラーによって宙に浮かぶUFOを表現。サーチライトの如く周囲を赤く照らすライティングが幻想的だ。続いて繰り広げられたのは1987年2月26日リリース、アルバム『Self Control』収録の“Maria Club“。これまでライブで披露された機会も多くないレアなナンバーだ。しかし、歌詞フレーズにある〈同じ仲間の集まる場所さ〉など、ライブ導入部にぴったりなダンサブルチューン。さらに、TM NETWORKはじまりの曲である“1974”を披露。LEDスクリーンには円盤が飛び交い、ネオンの星の瞬きとともに1984年、デビュー当時のミュージックビデオとシンクロするパフォーマンス。〈Sixteen あの頃の気持ち〉という大切なフレーズを、オーディエンスに委ねたシーンにも心動かされた。煌びやかな音像に、会場の空気が一気にリラックスしたムードへと変わっていく。

Photo by Hajime Kamiiisaka

TM NETWORKのライブにはMCとアンコールが存在しない。

そんなこともあってか、近年のツアーでは1曲、リハ中に小室が詞曲を書いたフォーキーなナンバーを小室と木根によるデュオで届けることが定番となった。タイトルは“Carry on the Memories”。TM NETWORKメンバーが、如何にしてアマチュア時代から、前身バンド、メジャーデビュー、そして紆余曲折あったかの想いが伝わるヒストリー。そんな長い長い物語において、今もなお好きな音楽を生業としていることへの感謝を歌にした人間らしいナンバーだ。

それをMCではなく、歌で届けるというのが奥ゆかしいTMらしい表現である。

Photo by Hajime Kamiiisaka

会場中、せつなさでいっぱいにしっとりとした空気感のまま、キネバラ名曲“Confession”へ。そう、木根作曲によるバラードは定評があり、それは通称〈キネバラ〉と呼ばれている。坂本美雨、くるりのメンバーもよくその魅力を語ってくれていた。そして、サポートギタリストの北島健二(FENCE OF DEFENSE)によるギターソロが熱かった。名演である。

ここで、TM NETWORKの歴史を代表する、1988年12月9日リリースの伝説的アルバム作品『CAROL 〜A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991』から、7曲から連なる通称〈CALOR組曲〉と呼ばれるナンバーを披露。しかも、映像に生成AIを活用することで、舞台であるロンドンの街並みや登場人物を、歌詞や音楽、物語、写真などを用いてプロンプトしていく。こうして生まれたサウンドと溶けあった映像は、ツアー中も常に微調整され毎回進化が止まらなかった。TM NETWORKが80年代から構想していた夢に、ようやくテクノロジーが追いついてきたことで実現できることになったのだ。

Photo by Kayo Sekiguchi

そして新曲となるインタールード的なインストチューン“Coexistence”では、映像とシンクロするパーカッシブなサウンドと共に、日本を代表するミュージシャンであるサポートメンバーの阿部薫(ドラムス)と北島によるソロプレイが重ね合わされていく。