1986年6月4日にリリースされたTM NETWORKの3rdアルバム『GORILLA』。ヒットを生み出せず窮地に陥っていたバンドが、小室哲哉の提供曲である渡辺美里“My Revolution”の大ヒットで勢いに乗り、起死回生を果たした転機作だ。〈FANKS〉(のちにTM NETWORKのファンを指す言葉になる)というテーマが掲げられるなど重要なポイントがいくつもある本作について、ライター平賀哲雄に綴ってもらった。 *Mikiki編集部
渡辺美里“My Revolution”のヒットでブレイクへの物語を生んだ転機
TM NETWORKのブレイクタイミングと言えば、フジテレビ系「夜のヒットスタジオ」初出演時に披露された“Self Control”のスマッシュヒット。そして、アニメ「シティーハンター」のエンディングテーマとして使用された“Get Wild”の大ヒットもあった1987年になるわけだが、このTMの存在が世間に知れ渡るスペシャルイヤーの前年1986年からすでに彼らの音楽人生は、大きな転機を迎えていた。
若手の登竜門と言われていた〈フレッシュサウンズコンテスト〉でグランプリに輝き、天下のエピック・ソニーから華々しく〈金色の夢を見せてあげる〉というキャッチコピーと共にメジャーデビューしたTMだったが、しばらくヒットに恵まれず。しかし、そんな契約解消の可能性も危ぶまれていた状況下で、渡辺美里が“My Revolution”でオリコンチャートにて初の1位を獲得する。これは言わずと知れた小室哲哉による提供曲で、この旋風がTMへの期待値を改めて高めるきっかけとなり、前述のブレイクに至るまでのストーリーを生み出していったのだが、そのターニングポイントとなる1986年に彼らは音楽的な転機ともなったアルバムを完成させている。
強い意志と並々ならぬ覚悟で海外にも通用する音楽を模索
今年2026年でリリースから40周年を迎えた『GORILLA』。この40年の歴史の中で幾度となくステージ上からファンを鼓舞してきた〈Welcome to the FANKS〉というワードが繰り返し響き渡る“GIVE YOU A BEAT”から始まる本作は、その後のTMの歴史を体感してきた今改めて聴くと、ここからTMの音楽人生を、日本の音楽シーンを大きく変えていこうとするような強い意志すらも感じさせる。それまでのエレクトロポップのイメージだけに捉われず、多彩なホーンセクションやカッティングギターなど生のサウンドにも拘り、リズムも全面的に生のベースやドラムスを有機的に取り入れて、FANKS≒TMなりのファンクミュージックも体現してみせた。その為にレニー・ピケット(ex-タワー・オブ・パワー)(サックス)、兼崎順一(ex-スペクトラム)(トランペット)、佐橋佳幸(ギター)、北島健二(FENCE OF DEFENS)(ギター)、伊藤広規(ベース)、青山純(ドラムス)、ネリー・フーパー(キーボード)、渡辺美里(コーラス)など錚々たる国内外のミュージシャンを起用している点からも、当時の彼らの並々ならない覚悟や意気込みを感じずにはいられない。
また、後年、小室哲哉は、様々な海外アーティストの名曲たちの様々なフレーズやアイデアを脳内ディレクトリに入れていて、そこから自身の楽曲を構成していくことも多いとトーク番組「TK MUSIC CLAMP」で語っていたが、本作においてもそれは顕著で、“雨に誓って ~SAINT RAIN~”ではデヴィッド・ボウイの“Let’s Dance”からのインスパイアを感じさせるし、ライブでのキラーチューンとなった“You can Dance”からはエルトン・ジョン“Saturday Night’s Alright (For Fighting)”や、同曲のリフに関してはローラ・ブラニガン“Gloria”からのサンプリングかと思うほどの強い影響を感じさせる。このアルバムがリリースされた当時、TMはまだブレイク前だったゆえに注目度は低かったかもしれないが、この時点であらゆる面で海外にも通用する音楽を模索していたことがよく分かる作品でもあるので、前述した洋楽たちともぜひ聴き比べみてもらいたい。
