日本が誇る世界的ホルン奏者が精鋭器楽奏者を集めた吹奏楽公演が、貴重なライヴ盤に
NHK交響楽団で長年首席奏者を務めたホルン奏者の福川伸陽は日本中のホルン奏者にとって憧れの的であり、世界的なホルン奏者と言っても過言ではない。そんな福川にとって音楽の原点となったのが、中学高校の6年間続けた吹奏楽だ。
「いつか吹奏楽のコンサートをやりたい」――。そんな福川の積年の熱い思いが結実したのが、今年6月20日に行われた吹奏楽公演〈フィルハーモニア・ウィンズ東京 2026〉。この白熱のコンサートを収録したライヴCDアルバムが2026年10月21日、キングレコードから発売される。 福川本人に思いを語ってもらった。福川自身はこれまでN響での活動、N響の首席奏者退任後は室内楽やソロ公演が主であり、吹奏楽についてはなかなか演奏する機会がなかったという。
「プロのオーケストラ奏者になってからは吹奏楽の世界から遠のいてしまい、接点がなく寂しいなと思っていました。そんな中、キャリアも長くなって音楽仲間も増え、僕自身もN響の首席奏者を退任していろいろな企画ができるようになりました。もしかしたらこの吹奏楽企画も実現できるかも知れないというのが発端です」
メンバーは指揮者の現田茂夫ほか、N響首席フルート奏者の甲斐雅之、N響首席クラリネット奏者の松本健司、ユーフォニアム奏者の外囿祥一郎など、国内最高峰の音楽家、管楽器奏者の精鋭が集まった。
「知り合いの奏者にLINEでひたすら出演依頼をして、多くの方が快諾してくれました。実は吹奏楽をほぼやったことがない方々もいたのですが、むしろ吹奏楽の曲でも吹奏楽っぽくなりすぎないというのは狙っていました」
曲目は“ショスタコーヴィチ(大橋晃一編曲):祝典序曲 Op.96”“リード:アルメニアン・ダンス パートI”“ヴァン・デル・ロースト:カンタベリー・コラール”“リード:エル・カミーノ・レアル”“スミス:フェスティヴァル・ヴァリエーション”“レスピーギ(森田一浩編曲):交響詩『ローマの祭り』”“レスピーギ(大橋晃一編曲):交響詩『ローマの松』”と、吹奏楽経験者であれば誰もが認める名曲、難曲ぞろいである。
「プロ吹奏楽団の定期公演でもこれだけ吹奏楽の名曲を集めて一気に演奏することはあまりなく、日本中からこれほどの素晴らしい奏者が集まって演奏できるのは本当に稀です。お客さんの期待感も高く、1曲目が終わった時の拍手などすごかったです」
今回の〈フィルハーモニア・ウィンズ東京〉は、〈祝祭管弦楽団〉のようなコンセプトと雰囲気を持ち合わせたものだったという。
「吹奏楽は野球の甲子園のような青春の一ページであり、今回の企画は野球のオールスターみたいなイメージです。当時のように指導者に言われて演奏するのと今のように自発的に演奏するのは全然違いますし、知っている曲でも新たな発見があります。今回は実は裏テーマが〈お祭り〉で、曲のタイトルも祭りを意識しました」
今回のような吹奏楽コンサートは初の試みだったが、今後はコンサートだけではなく吹奏楽やクラシックに親しんでもらえる企画を検討している。
「来年もコンサートをやる予定ですし、コンサートだけではなく、午後から吹奏楽祭りのようなより大きな形にしたいです。また、ボストン・ポップス・オーケストラのように映画音楽とかゲーム音楽などポピュラー系の音楽もやってみたい。吹奏楽とクラシック、ポピュラーをうまくつなげることができるといいなと思っています」
N響の首席奏者を退任して約5年が経った。現在N響は創立100周年記念プロジェクトが進行中のために福川が再びN響に関わる機会も多いが、室内楽などの経験値が大幅に上がり、福川自身の音楽の幅はますます広がっている。ホルンの魅力もさらに伝えていくつもりだ。
「今はソロも室内楽もオケも同じテンションで演奏するフラットな感覚で活動できています。いずれも楽しいプロジェクトで、どれも重要です。ホルンは幅の広い楽器なので、吹奏楽も含めてすごく素敵だねと言ってもらえるシーンをたくさん作っていきたいと思っています」
福川伸陽(Nobuaki Fukukawa)
神奈川県出身。NHK交響楽団首席ホルン奏者としてオーケストラ界にも貢献。ソリストとして、NHK交響楽団、パドヴァ・ヴェネト管弦楽団、京都市交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団他と共演。ロンドンのウィグモアホールをはじめ、ロサンゼルスやブラジル、アジア各国でリサイタルをするなど、世界各地から数多く招かれている。東京音楽大学准教授、国際ホルン協会評議員。
LIVE INFORMATION
Japan Horn Sound vol.1.5 Tour 2026
2026年11月29日(日)福岡・北九州市立響ホール
開場/開演:14:00/15:00
■出演
福川伸陽、高橋臣宜、鈴木 優、信末碩才(ホルン)
山中惇史(ピアノ)
山口大輔(パーカッション)
