(左から)福川伸陽、久石譲、石川滋

久石譲の音楽の根本を形成するミニマル・ミュージック。そこから生まれた作品をシリーズで録音してきた〈ミニマリズム〉の最新作となる『ミニマリズム4』がリリースされた。今回は久石の盟友とも言えるフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)のメンバーであるコントラバスの石川滋と、ホルンの福川伸陽をソリストに据えた“コンチェルト”を2曲収録した。

コントラバスのための協奏曲は、クラシック音楽の歴史を振り返ってみても、かなり数が少なく、また21世紀に入って書かれた作品としても貴重なものとなる。ホルンのための協奏曲はホルン1本だけではなく〈3本〉のホルンのための協奏曲という、これもかなり珍しい編成のための作品となった。その協奏曲が書かれたきっかけから、実際の作曲過程、そして初演、録音までのエピソードを久石、石川、福川の3人に自由に語って頂いた。

久石譲 『ミニマリズム4』 ユニバーサル(2021)

 

ソリストとオーケストラは五分五分

――久石さんの書いた協奏曲を2曲収録した『ミニマリズム4』がリリースされます。まず“コントラバス協奏曲(Contrabass Concerto)”ですが、これが書かれたきっかけを教えて頂けますか?

石川滋「この作品の初演は何年でしたっけ?」

久石譲「確か2015年だったと思うけど」

石川「そうでしたね。だからまだ5年ぐらいですか。意外に最近の話だった(笑)」

――久石さんはいろいろなジャンルの作品を手がけていらっしゃいますが、久石さんの中で、協奏曲とはどんな位置づけにあるのでしょうか。

久石「協奏曲も、やはりオーケストラに向けた作品ということが、作品を作る上で半分を占める重要な要素になりますね。オーケストラ作品を書く場合は、オーケストラの機能を最大限発揮出来るように書きますが、協奏曲の場合は、ソリストとオーケストラはある意味で五分五分の立場です。単純にオケが伴奏に回るような作品は書きたくないし、ソリストはオーケストラと対峙して、その全部を引き受ける形にもなるので、その楽器の特性をすべて発揮してもらいたい。それを踏まえて書くのが魅力的だし、とても大事なことだと思っています」

――その時に、久石さんの創造力を刺激するのは、楽器なのか、奏者なのか、それとも楽器とオーケストラの組み合わせなのか? どういう組み合わせが一番、創造力を刺激するのでしょう?

久石「もしかしたら、それ全部なのかもしれません。コントラバス協奏曲を書いている時は、石川さんの顔が絶えず浮かびます。それが無いと書けないし。ホルンの場合は福川さんが吹いている顔を想像しないと書けない。

じゃあ、パーソナリティーとして、その奏者のために書いているのかというとそうではなくて、やはりコントラバスなりホルンなりの楽器のために書いている。だから、両方の面があると言えるでしょうね」

――そこで、久石さんはなぜ、コントラバスとホルンという楽器を選ばれたのかな、という素朴な疑問があるのですが。

久石「それは単純。頼まれたから(笑)」

石川福川伸陽「(爆笑)」

久石「コントラバス協奏曲を書くきっかけは、日本テレビの番組(『読響シンフォニックライブ』)のプロデューサーさんから〈コントラバスの協奏曲を書きませんか〉と依頼されたからで、ホルン協奏曲のほうは福川さんから〈ホルンのための曲を書きませんか〉と言われたのがきっかけなので。やっぱり言われないと書かないですよ(笑)」