肉食でワイルドなアルバム

 気付けば花盛りのラウド・ロック・シーンのなかで、KNOCK OUT MONKEYの位置付けは独特だ。音だけ聴けばハードコアスクリーモ、あるいはファンク/ヒップホップ系のミクスチャー・サウンドなどがメインなのだが、ロックンロールやジャズの要素もあり、バラードもさらりとやってのける。ヴォーカルは豊かな声量で言葉とメロディーをしっかり歌う正統派で、ヒットチャートのなかにまぎれ込んでも違和感はない。今年11月には〈KNOTFEST JAPAN 2014〉でスリップノットコーンリンプ・ビズキットらと同じステージに立ったかと思えば、同じ時期には地元・神戸のフェス〈TOWER RECORDS 35th & FM802 25th Anniversary Special Live FACE THE MUSIC! 2014〉でDragon AshストレイテナーMAN WITH A MISSIONらを向こうに回して大熱演。その独自の魅力を多くのオーディエンスの心に刻み付けることに成功した。

 「どっちも〈おりゃあああ!〉って殴り込みに行くようなフェスだったんですよ。洋楽勢のレジェンドと邦楽勢のレジェンドのなかに入っていくからにはそれが礼儀だと思うし、それがロックだと思うので。〈爪跡を残してやる!〉という思いはありましたね」(w-shun、ヴォーカル/ギター)。

 「その世代のアーティストを聴いてきて、影響を受けたのはまぎれもない事実だけど、二番煎じで終わったら意味がない。どんなイヴェントでも絶対に霞むことのないライヴをやるのが俺らのやり方です」(亜太、ベース)。

 多くの大規模フェス出演に加えて初のワンマン・ツアーを成功させるなど、飛躍の2014年を経て届けられるセカンド・アルバム。『Mr. Foundation』は〈土台/基礎〉という意味の通り、バンドとしての初期衝動を再確認しながら新たな土台を築き上げるという、強い意志に貫かれた強力な作品だ。

KNOCK OUT MONKEY Mr. Foundation Being(2015)

 「出来上がって聴いてみると、とても肉食なアルバムだなと。ワイルドですね。『Mr. Foundation』というだけあって、自分たちが好きな音楽のベーシックを、前のアルバムで得た知識や技術でより昇華させることができたなと思ってます」(dEnkA、ギター)。

 「最近は楽曲を大事にしすぎて、音に個性があるバンドがなかなかいないと思うんですよ。そこで自分の個性って何だ?と思った時に、十代の頃、ドラムを始めた時に憧れた音があって、手クセになってるんですけど、それをもっと出していいんじゃないか?と。今回は手クセ入れまくりです」(ナオミチ、ドラムス)。

 「1年前のファースト・アルバム(『INPUT ∞ OUTPUT』)はすごい振り幅を広げて作って、どうなるんだろう?と思ってツアーを回ったら、意外と素直に受け入れてもらえた。激しい曲もスロウな曲もみんなちゃんと耳を傾けてくれたので、今回のアルバムでより一層振り切ってやることに臆することなく挑めたと思います。凝り固まらず、作り込まず、素直にさらけ出すことがお互いに気持ち良くて楽しいことだということを発見しました」(亜太)。

 

〈無茶苦茶さ〉にロックを感じて

 激しい曲の代表は、たとえばメタリックなフレーズとパンクなスピード感が合体した“RIOT”、重厚なラップコア曲“Take you”、ヘヴィーなリフで押しまくる高速2ビートの“?”など。明るいラテンのビートを採り入れた“Wonderful Life”、TVアニメ「名探偵コナン」のテーマ曲になったオールディーズ風のロックンロール“Greed”、図太いベースがサウンドを引っ張る“How long?”と、既発シングルからの3曲もアルバムのなかで新たな輝きを得た。

 「僕のお気に入りは“Priority”です。アコギの音をあえて悪くしたり、音色にこだわったんですよ。西海岸の刺青入ってる悪そうな兄ちゃんが、酒飲んだ勢いでそこにあったアコギを弾いたら曲になっちゃいました、という感じを出したかったので。このイメージはいまだからこそ出せたと思います」(dEnkA)。

 「いまやりたいこと、鳴らしたい音、そして言いたいことがしっかりと言えました。僕は伝えたいこと、言いたいことがあって音を鳴らしてるんで、歌詞は特に重要なんですよ。“RIOT”と“Take you”で〈連れて行く〉と歌っているのは、自分で自分のケツを叩くため。時にはネガティヴになることもあるけど、すごいフェスに出させてもらったり、ワンマンをやらせてもらったり、そこで俺らの音楽に心打たれたと言ってくれる人がいるんだから、〈おまえはみんなを引っ張っていく存在なんだ〉と自分に言い聞かせて、〈行く時は行こうぜ!〉という決意が強く出たんだと思います」(w-shun)。

 一方でメロディアスな曲の代表は、透明な孤独感漂う歌詞が胸に痛い“MOON”、アコースティックなバラードで、帰るべき故郷の美しさを描いた“街”。ジャンルではなく、心を揺さぶる音楽を作り続ける彼らの大事なアナザー・サイドがここにある。

 「特にこだわったのは“MOON”。ドラムはめっちゃ簡単で、誰でもコピーできますよ。もしも自分がロックを好きになった年齢に、このアルバムが出ていたら絶対好きになっただろうなというものをめざしたかったので」(ナオミチ)。

 「押せ押せだけが自分でもないし、弱い部分もダサい部分もあるから。そういう自分もいるんだとわかったうえで曲を作った時に、もしかすると琴線に触れてくれる人がいるかもしれない。音楽はそういうキャッチボールだと思うので。“街”は、僕がいま住んでるのは神戸なんですけど、もともとは兵庫県の西のほうの生まれで、ツアーを回って神戸に帰ってくると美しいと思うし、神戸から田舎に帰ってもほっとする。そこには何かがあるんだろうなと思って書いた歌詞です。重い話ではないですけど、震災で地元を離れて、住みたくても住めない人がいるわけじゃないですか。自分はそこに住んで、いつでも帰れる場所がある。これほどありがたいことはないという思いがあって、そこから生まれた曲です」(w-shun)。

 群雄割拠のラウド・シーンを突き抜けて、もっと遠くへ。しっかりと土台を固めた彼らが2015年にめざすのは、ジャンルのない広い世界とより多くの未知のリスナーだ。

 「このアルバムを作って、初期衝動のカッコ良さに改めて気付けたので。その思いを持ったうえで、もっと自分がワクワクすることを探していきたいと思います。こいつら無茶苦茶やなと思うかもしれないけど、そこにロックを感じてほしいし、僕はそこがロックだと思ってるので」(w-shun)。