明和電機「ミスターノッキー」/「大人の科学マガジン エレクトリック・スチールドラム」
家族で楽しめるおススメの打楽器オモチャ2種
子どもは、叩いて音を出すことが大好き。何かをつかむことができるようになったら、床や壁にカチカチバンバン、おもちゃを叩きつけ音を出す。もしかしたら、(演奏とも言える)この行為が赤ちゃんにとっての最初のクリエイティブかもしれない……。10年ぐらい前に私がアフリカを訪れたときのこと、ザンビアの何もない平原に佇む小さな村で、早朝、村の子どもが木の枝で車のホイールを叩き続けていた。乾いた空気と見渡す限り地平線しかない大地にそのプリミティブなリズムが響きわたり、異次元空間にでも行った気分に包まれたことがある。何もない静寂に音を響かせる体験には、音楽云々以前に、空間や時間に関する質の“発見”がある。打楽器はそういった体験と密接な関係がある。
さて最近発売された明和電機「ミスターノッキー」、大人の科学「エレクトリック・スチールドラム」、どちらも子どもが喜びそうな打楽器オモチャ。
「ミスターノッキー」は、オタマトーンなどのユニーク楽器製作の第一人者、明和電機の新作。ノッキー君の腕に繋がれたワイヤーを人間が遠隔操作して、ノッキー君にパーカッションを叩いてもらうという楽しいオモチャ。リモコンで電気的にではなく、ワイヤーで物理的(!)に操作するところが素晴らしい。というのも、こういう構造が見えるオモチャは子どもの知育も役立つし直感的に現象を感じることができる。同じ遠隔操作でもゲームセンターやアプリの「太鼓の達人」とは、違う感覚。2次元の映像世界で動いているのと、3次元の物理的なものが動いているのでは大きな違いがある。ノッキー君のタイコは左右で音程が異なるため、左右の音の鳴らし方次第でかなりバリエーションにとんだリズムパターンを作ることができる。さらに、付属のタイコの代わりに空き缶などに差し替え/固定して演奏することも可能。このカスタマイズができることで世界がぐっと広がる。自分の手の動きでノッキー君が演奏する感覚は、リアルであるが故にとっても不思議な感覚であり、見ていても楽しい。
「エレクトリック・スチールドラム」は、好奇心旺盛な少年少女系大人の心をくすぐるテーマで次々と逸品をリリースしている大人の科学シリーズの新作。小型のスチールドラム(スティールパン)に、その音を電気的にピックアップしアンプで鳴らせる回路が付属する。スチールドラム部分は、“ピンポン”と呼ばれていた昔のスティールパンの響き。キン♪コン♪とかわいらしい音がする。本には、日本のスティールパン第一人者ヤン富田さんの興味深いインタヴューや、スティールパンに関する歴史、その製法、構造等が詳しく書かれている。このキットには、スティールドラムの音程をチューニングするためのハンマーが付属されており、本の説明に従い自分でチューニングを試みることができる。小さいお子さんにはハードルが高いかもしれないが、親がチューニングをして音程が変わるのを見せてあげたら子どもは喜ぶだろう。
子どもは音が鳴るだけでそこにおもしろさを見いだす。“音楽”の前に、まず“響き”の発見をするのだろう。触ったこともない不思議な形をしていればなおさら興味をもつ。こんな素敵なオモチャ楽器といっしょに親子で休日を過ごすのも楽しいと思う。