今回は4年振りとなる新作『Mirage』がリリースされたばかりのフランスのエレクトロニカ・ユニット、セイセットの事を書いてみようと思います。
セイセットはピエール・ルフェブによるフランスのユニットで、丸みを帯びたシンセ・リフと坂本龍一さん、久石譲さんの影響も感じさせる(実際影響を受けているそうです)叙情的な旋律、エレクトロニカやシューゲイザーのマナーが融合した独創的なサウンドを聴かせてくれます。また、その音像の中を、フォン・ソムサヴァットの幻想的な声が流れて行く事でボーズ・オブ・カナダ×ムームとも形容したくなる唯一無二の個性を獲得しています。
今回もバイヤー日誌らしく(?)、この作品を取り扱った経緯にも少し触れておきます。
元々輸入盤でセイセットの前作『Through The Window』を店頭に置いていましたが、音を聴いて買っていかれる方がかなり多く、ただ、やはり輸入盤という事で供給に難もあり、すぐに店頭から無くなってしまいました。
そこで、レコード会社であり、この作品のディストリビューターであったインパートメントさんに「国内盤としてライセンス・リリース出来ないでしょうか?」と相談をした結果、晴れて国内盤としてリリースする運びとなり、安定の供給でこの素晴らしい作品を多くの方に届ける事が出来ました。
そして、その店頭でのお客さまの反応は想像以上でした。
国内盤をリリースした同じ年には来日公演も開催され、日本限定でデビュー作『One Day At Home』がリリースされるなど、前作をきっかけに日本では多くのファンを魅了しました。
この『Through The Window』の国内盤ライナーノーツを書かせて頂いてますので、よろしければご覧ください。
ここで、『Through The Window』の中から2曲PVを貼っておきますので是非ご覧ください。
そして、4年振りとなる新作『Mirage』は世界的建築家ル・コルビュジエが設計したユニテ・ダビタシオンを訪れた事にインスパイアされて制作したという意欲作! 今回も美しい旋律と独創的なトラックによる幻想的サウンドを聴かせてくれます。
こちらもアルバムより2曲貼っておきます。
最後にシューゲイザーとエレクトロニカの接近について少し触れてみます。シューゲイザーはディストーションをかけたギター・サウンドが音の雲を作って、ある種メロディーと別軸の空間的な音が同じ場所に鳴っていた訳ですが、エレクトロニカもそういった意味ではシューゲイザーの影響を受けており、より発展的に雑多な音の対比を取り入れて行く事になります。
そして、2000年代初頭エレクトロニカ側からシューゲイザーへとアプローチするムーヴメントが起きました。こういった作品で最も有名なのは、ギター『Sunkissed』でしょう。ほかに、ウルリッヒ・シュナウスや、M83などがいます。
上記のギターのほか、名作連発であったドイツのレーベルMorrはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインと並んでシューゲイザーの代名詞的存在であるスロウダイヴのトリビュート・アルバムを2002年にリリースしており、(ラリ・ピュナ、スタイロフォーム、マニュアル、ギターらが参加した2枚組)当時のムーヴメントを克明に記録しています。
VARIOUS ARTISTS BLUE SKIED AN' CLEAR -morr music compilation- 残響record(2009)
シューゲイザーは後のグローファイ/チルウェイヴ等にも間接的影響があり、このセイセットも2000年代初頭Morrらの試みの延長線上に位置付けられると見る事も出来るでしょう。
※2016年3月17日追記
東京・六本木の新ライヴ・スポット=VARITのオープニング・シリーズで、セイセット一夜限りの来日公演が実現!
ROPPONGI VARIT GRANDOPENING PARTY
「Saycet Live In Tokyo2016」
日時/会場:4月2日(土) 東京・六本木VARIT
開場/開演:18:30/19:00
出演:Saycet / フルカワミキ(DJ)/ CRYSTAL(LIVE)
チケット(税込/1D別):前売り/3,500円 当日/4,000円
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