ヒッチコック映画を、たかがサスペンスだという“内容”から評価しない世の中に対して、お前ら分かっとらん!と、当時の常識に物申したのがフランスの映画誌カイエ・デュ・シネマの面々であり、トリュフォーの名著『映画術』に先立つこと57年に刊行された本書はその成果である。“形式”と“内容”は不可分であり、“形式”が“内容”を創造するとして、ヒッチコックの“形式”を紐解きつつカトリック的な“内容”を解き明かしていくのは、後にヌーヴェルヴァーグの巨匠となる若きロメールとシャブロル! こんな重要な書物が初邦訳という事実に驚きつつ、正しい喧嘩の売り方を学ぼうではないか。