コラム

英国ロイヤル・オペラ〈ラ・ボエーム〉を日本全国の映画館で本国より中継上映! ライヴ・ビューイングが実現

英国ロイヤル・オペラ〈ラ・ボエーム〉を日本全国の映画館で本国より中継上映! ライヴ・ビューイングが実現

 「失った鍵、暗闇のなかでの冷たい手への衝撃的な接触…。そこから一つの素晴らしいロマンスが始まった」と、英国ロイヤル・オペラは、プッチーニの『ラ・ボエーム』をミステリアスに紹介する。英国ロイヤル・オペラはいま、「live cinema season」すなわち“ライブ・ビューイング”に力を入れており、6月11日に日本でも上演される『ラ・ボエーム』は、そのハイライトなのである。

 メトロポリタン歌劇場が先端を切ったライブ・ビューイング・フィーバーはいまや世界的に拡大しつつある。英国ロイヤル・オペラ(ROH)も35か国に同時配信しており、世界1500以上の映画館でイギリスからの中継映像を楽しむことができる。「ROHライブ・シネマ・シーズン」の特徴は、前日に公演した舞台をその翌日、たった1日だけ日本でも上映する。まさにライブ・ビューイングの臨場感を大切にしている企画なのだ。1日だけだけれど、北は宮城から南は鹿児島まで、日本各地の最大62か所の映画館で同時中継される。

【参考動画】「英国ロイヤル・オペラ・ハウス Live Cinema Season 2014/15」のトレイラ―

 

 ROHといえば、アントニオ・パッパーノ音楽監督のもと、斬新な演出と豪華スターが競演することで、オペラ・ファンの注目を常に集める世界第1級の歌劇場だ。ブリン・ターフェルヨナス・カウフマンアンジェラ・ゲオルギューアンナ・ネトレプコといった大スターがROHの常連だ。またオペラだけでなく、世界最高峰のロイヤル・バレエ団も併設する劇場であり、「ROHライブ・シネマ・シーズン」はバレエのラインナップも大人気になっている。最近ではヴィットリオ・グリゴーロ主演の『愛の妙薬』、ヨナス・カウフマン主演の『アンドレア・シェニエ』(これが特別に素晴らしかった!)、ブリン・ターフェル主演の『さまよえるオランダ人』、バレエではナタリア・オシポワ主演の『白鳥の湖』、5月6日は『ラ・フィーユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)』と話題作が続いている。

 このライブ・シネマ・シーズンは、生の舞台では決して見ることができない興味深いカメラ・ワークが話題だ。スターたちの表情がアップになり、微妙な登場人物の心理状況まで把握できる。また開幕前や幕間には歌手たちへのインタヴューや楽屋の様子、装置のセッティングやリハーサルの様子などを映像で紹介している。これは、生の舞台とは全く違った、カジュアルなオペラの楽しみ方ということができるだろう。

【参考動画】『ラ・ボエーム』のトレイラ―

 

 さて6月11日の夜7時から全国の映画館で上演される『ラ・ボエーム』は、ROHが最も力を入れる公演の一つ。なにしろ主役のミミを歌うのは、いまをときめく人気プリマドンナ、アンナ・ネトレプコだからだ。彼女はここ数年、体格が立派になると同時に声に厚みが出て低音が充実してきた。ヴェルディの『マクベス』や『イル・トロヴァトーレ』など新しいレパートリーにも挑戦して大成功を収めている。ミミ役は以前から得意にしているが、圧倒的な存在感と深い表現力で、これまでにない、真に迫った悲劇的なミミを演じてくれるに違いない。相手役のロドルフォを歌うのは、急成長を続ける若手テノール、ジョセフ・カレヤだ。彼はマルタ島出身で、十分な声量と輝かしい高音を持ち、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場などでもひっぱりだこの人気。ネトレプコと息の合った恋人を演じてくれるだろう。

 画家マルチェロ役のルーカス・ミーチャムは、2009年にROHにデビューして『フィガロの結婚』のアルマヴィーヴァ伯爵などを歌っているアメリカ人バリトン。ムゼッタを歌うのは今回ROHデビューを果たす若いアメリカ人ソプラノ、ジェニファー・ロウリー。この『ラ・ボエーム』はパリのカルチェ・ラタンにたむろする、若い芸術家たちのはかなくも切ない悲恋物語。主役級の4人は若手の実力派ばかりなので、リアルな舞台になるだろう。また家主ベノワ役のジェレミー・ホワイトは何十年もROHでこの役を演じ続けているという超ベテラン。このプロダクションが始まった1974年からずっとベノワ役で舞台に登場している。

 ジョン・コプリーの演出は超オーソドックスで細かい箇所まで、リアルさを追求した重厚な舞台。メトロポリタン歌劇場のゼッフィレッリのプロダクションと双璧をなす名プロダクションだ。2幕のカフェ・モミュスの場は2階建ての豪華な装置で、ビリヤード台が効果的に使われる。圧巻は3幕のアンフェール関門の場。雪のちらつく早朝に、ロドルフォがいるカフェを訪ねたミミは、別れ話を持ち出す。2重唱を歌う美しい幕切れでは、哀しい二人の上に冷たい雪が舞う。なお40年以上も使われ続けたこのプロダクションは、今回が最後の上演になるという。

 さてライブ・ビューイングを見てから生を見るか、生の舞台を見てからライブ・ビューイングを見るか。9月にはパッパーノに率いられた英国ロイヤル・オペラ団が5年ぶりの来日を果たす。いまROHはオペラ・ファンから熱い注目を集めている歌劇場なのだ。

 



ロイヤル・オペラ・ハウス
Live Cinema Season 2014/15 - JAPAN
『ラ・ボエーム』

6/11(木) 19:00より全国の劇場で中継上映
劇場情報はこちら

出演:
ミミ/アンナ・ネトレプコ
ロドルフォ/ジョセフ・カレヤ
マルチェッロ/ルーカス・ミーチャム
ムゼッタ/ジェニファー・ロウリー
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

指揮:ダン・エッティンガー
演出:ジョン・コプリー
美術:ジュリア・トレヴェリアン・オーマン
照明:ジョン・チャールトン

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