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■11月23日(月・祝)

 

2日目に突入した〈HCW〉の一番手は、今年4枚目のアルバム『Have You In My Wilderness』をリリースしたLAのジュリア・ホルタ―。同作が多くのメディアから称賛されるなか、これ以上ないタイミングでの初来日となった。ヴィオラ奏者にベーシスト、ドラマーを迎えたクァルテット編成で、新作からの楽曲に“This Is A True Heart”など過去の人気曲を織り交ぜて進行していく。凛とした歌声と美しい音色は夢見心地であるものの、現代ジャズやポスト・クラシカルの系譜ある拍を攪乱するかのようなアンサンブルは、緊張感もあって非常に刺激的だ。神々しいカリスマ性とチャーミングさを併せ持つジュリアは、まるで「指輪物語」に登場するガラドリエル様のよう! 先進的でありながら始原的という、アーティスティックなパフォーマンスであった。

 

続いて登場するのは、〈HCW〉に2年連続での出演となるボヒカズ。キラー・チューン“XXX”でUKロック・ファンの心を一気に奪った彼らは、今回なんとその“XXX”を1曲目に持ってくる大胆なスタートを見せ、オーディエンスは一気に盛り上がる。とはいえ、この日はやや長めの持ち時間だけに、いきなり一番のアンセムを持ってきて大丈夫なのかと(勝手に)心配してしまったが、それは余計な心配だったようだ。ファースト・アルバム『The Making Of』の楽曲を中心に、ミッドテンポのブルージーなナンバーから、グルーヴィーなロックンロール・チューンまで緩急織り交ぜたステージングは実に堂々たるもの。白人と黒人が2人ずつ、おまけに全員長身で美脚というメンバー4人はステージに並ぶだけで抜群のカッコ良さ。その編成ならではのモッドな黒さも堪らない。フロアは終始波打っており、〈次に来るときは、いよいよヘッドライナーもありえるな〉と思わせられた。

 

〈HCW〉の2日目も折り返し地点となる3番手で登場したのはミステリー・ジェッツ。今回の来日アナウンスと期を同じくして、通算5枚目のニュー・アルバム『Curve Of The Earth』を来年初頭にリリースすることを発表。すでに同作は2016年を代表するアルバムになるのではないかと噂されている。しかも〈HCW〉開催直前には、新作をフル・パフォーマンスする特別セットを披露するとの報せも飛び込み、彼らの新たなるモードをこの目に焼き付けんと会場の温度も高くなっていた。

この日披露された9曲からも読み取れるように、新作『Curve Of The Earth』は極めてプログレッシヴなアルバムと言えそうだ。いわゆるシングル向きのポップソングは皆無で、ポリリズムを採り入れたアンサンブルは複雑そのもの。パフォーマンス中にはスリリングな局面もあったが、そこからもバンドが新作で課した高度なトライアルが窺えるというものだ。〈なにか、とんでもないことになっていそう〉と思わずにいられない、まったく新しいミステリー・ジェッツ像を印象付けるスペシャルな公演だった。新作セットの後は“Two Doors Down”などを含む人気曲を4曲披露し、大盛り上がりでライヴは幕を閉じた。

 

そして2015年秋の〈HCW〉の大トリを飾ったのはブロック・パーティ。彼らも来年1月にニュー・アルバム『HYMNS』のリリースを発表している。さらに前作発表後にオリジナル・メンバーのリズム隊2人が脱退し、女性ドラマーを含む新編成ではこれが初来日。生まれ変わったバンドの現在地を目撃しようと、多くのファンが詰めかけていた。セットリストは、過去4枚のアルバムから万遍なくセレクト。切れ味鋭いポスト・パンクから、エレクトロニック・ミュージックの潮流を意識したダンス・ナンバーまで、常に変化してきたブロック・パーティの歴史を一夜に凝縮したようなパフォーマンスだった。新メンバーの2人もしっかりと安定しており、デビュー時より幾分大きくなったケリー・オケレケの存在感にはヴェテランに達しつつあるバンドの包容力を感じた。

アンコールでは新作からの楽曲も演奏。すでにMVが公開されている“The Love Within”は大きな歓声をもって迎えられ、彼らのディスコグラフィーにおいては異色とも言うべきポジティヴなヴァイブを持ったフロア・アンセムの誕生を予感させた。〈HCW〉2日目の全公演においても、ピークタイムはこの曲が披露された瞬間だったかもしれない。ベスト的な選曲を貫きつつ、一番新しいナンバーで最高潮に持っていくという見事なステージングで〈HCW〉は大団円を迎えたのであった。