エフェクターを駆使したカラフルなギター・サウンド、ダンサブルかつ強靭なビート、中性的な歌声によって、唯一無二のトランシーな空間を生み出す4人組バンドのHaKUが、セカンド・アルバム『シンバイオシス』を完成させた。〈共生〉を意味するこのタイトルは、メジャー・デビュー以前から念頭にあった言葉なのだという。
「いつか〈共生〉っていう言葉を使えるようになりたいし、そういう作品に巡り合えるようにがんばっていこうとずっと思ってたんです。これまでライヴ会場限定とか配信も含めて、いろんなリリースをコンスタントにしてきたんですけど、全部がここに向かうためのステップで、ここを見据えて曲を作ってきたので、ようやくこのタイトルを付けたアルバムが出来てホッとしてる部分もあるし、成長したなって感じがしてます」(辻村有記:以下同)。
メジャー・デビュー以降のHaKUの最大の変化について、辻村は〈問題提起をするバンドから、答えを提示するバンドへの変化〉を挙げる。さまざまな人生経験を通じて獲得した〈答え〉を、オーディエンスに投げかけ、引っ張っていくために、昨年発表のシングル“masquerade”やミニ・アルバム『wonderland』では、禁じ手だったシンガロングなナンバーを解禁し、ライヴでの一体感を共有したことで、〈共生〉のアルバムを作ることができたのだ。
「このアルバムで〈人間ってこんなふうに変われる〉っていうことを知ってほしくて。卑屈で、悲観していた人間が、明るい言葉を選べるようになった。そのプロセスが、この作品一枚を通して感じてもらえると思うんです。今回はその言葉をどう届けるかっていうことをメンバー全員が意識して音作りをしてくれて、ただ歌を前に出すだけじゃなく、HaKUらしい尖った部分もちゃんと残しながら、作品にすることができたと思います」。
本作には全14曲が収録されているが、ヴァラエティーに富んだ作風で、冗長な感じは一切ない。いわゆる4つ打ちのダンス・ロックでも、彼らの楽曲は速いものから遅いものまでBPMがさまざまだし、シンプルな8ビートやサンバ風などリズム・パターンは非常に多彩で、なおかつ曲展開は基本的にプログレッシヴ。そのうえで、冒頭の“dye it white”をはじめ、即効性のあるキャッチーな曲が増えているのも特徴だ。そして、HaKUの最大の武器である藤木寛茂のプレイは、ギター・シンセの導入によってますます過激に進化。彼らのド派手な楽曲というのは、昨今のEDMと結果的にリンクしているようにも感じられる。
「今回、最初は(あらかじめ用意した音源の)同期を使いたいと思ったんですよ。頭の中で鳴ってる音を再現したくて、寛茂に〈ピアノ入れない?〉って言ったら、あいつのギターからピアノみたいな音が出てきて(笑)。やっぱり生のほうが緊張感があるし、お客さんの鼓動ともリンクするし、せっかくここまで人力っていうのを曲げずにやってきたから、最終的にそこは貫き通すことにしたんです」。
バンドはこれまでにマレーシア、インドネシア、台湾でもライヴを実施。さらに昨年、辻村はひとりでアメリカを旅行し、憧れのライヴハウスの空気を直に味わってくるなど、彼らの目線は外に開かれている。そして、その思いはいま、ますます強まっているようだ。
「島国のなかではわからないことっていっぱいあって、外に出て、違うものを採り入れて、それを音楽にしていきたいっていうのは今後の目標ですね。2020年に東京オリンピックが開催されて、海外からも人がたくさん来るわけだから、その時いろんなことが変わると思うんですけど、そこに向かって、日本の音楽も変化していくと思うんですよ。その流れのなかにHaKUもいて、よりワールドワイドに活動していけたらいいなって思います」。
PROFILE/HaKU
辻村有記(ヴォーカル/ギター)、藤木寛茂(ギター)、三好春奈(ベース/ヴォーカル)、長谷川真也(ドラムス)から成る4人組。2007年に大阪で結成。精力的なライヴ活動と並行して2009年に初音源『WHITE LIGHT』を発表し、その後も年に1枚のペースで計3枚のミニ・アルバムをリリース。2012年4月に拠点を東京に移し、10月にファースト・フル・アルバム『Simulated reality』でメジャー・デビューする。2013年は1月にシングル“masquerade”、6月にミニ・アルバム『wonderland』と立て続け、7月にはマレーシアでの単独公演も経験。台湾をはじめ東南アジアでも支持を広げるなか、ニュー・アルバム『シンバイオシス』(ユニバーサル)を4月30日にリリースする。