日本が誇る音楽評論家・黒田恭一さん。亡き氏が残してくれた多くの評論は今も音楽ファンに愛され読まれ続けている。2015年に発売された『ぼくだけの音楽1』を手にとり、改めて黒田さんの温もりのある文章を読んでいると、なぜか心にこみ上げてくる感情がひた走ったのを覚えている。そしてシリーズ第二弾がこうして早々と刊行された訳だが、今回も約40名を超える音楽家や団体への深い眼差しのエッセイが収録。とりわけクラウディオ・アバドに対する人となりの文を拝見すると、走馬灯のように巨匠の演奏が頭から離れない。「文章から演奏が聴こえてくるようだ」とよく言われるが、まさに黒田恭一さんの文章に他ならない。