ブルックリンから登場した男女3人組、サンフラワー・ビーン。昨年デビューしたばかりの彼らが早くも注目を集めている理由のひとつに、サンローランのクリエイティヴ・ディレクターであるエディ・スリマンに見初められたことも挙げられると思う。エディと言えば、ブレイク前のジェイク・バグやジーズ・ニュー・ピューリタンズ、ドラウナーズなどにいち早く反応してきた男。そんな目利きも期待を寄せるバンドのファースト・アルバム『Human Ceremony』が、ついに解禁された。男性メンバー2人はレコーディングの経緯をこう振り返る。
「これまでリリースした作品は自宅録音だったけど、今回初めてプロフェッショナルなスタジオに入ってレコーディングしたんだ。すべてを準備するのに2か月くらいかかったよ。まず、バンドの練習スペースになっている僕の家の地下室でデモを作ったんだ」(ジェイコブ・フェーダー)。
「そのデモのおかげでスタジオに入る前にいろいろ決めることができた。レコーディングは最高に楽しかったよ。プロデュースは元フレンズのマット・モルナーに依頼し、ウッズのジャーヴィス・タヴェニエルも参加してくれたんだ。スタジオにはゴボって名前のフレンチ・ブルドッグが住んでいてさ、凄く可愛かったな」(ニック・キヴレン)。
フレンズもウッズもブルックリンのバンド。サンフラワー・ビーンが地元のシーンと深い繋がりを持っている様子も伝わってくるが、アルバムには疾走感のあるガレージ・ロックとサイケデリックなムードが溶け合った、彼ら独自のポップセンスが光っている。
「言葉にするのは難しいけど、自分たちのめざすものが何かは、はっきりわかっていた。過去に録った曲よりも、ずっとクリアな音楽を作りたかったんだ。バンドのメロディアスな面が、間違いなくこれまで以上に出ていると思う」(ニック)。
その〈メロディアスな面〉での成長は、紅一点ジュリア・カミングの甘くキュートな歌声とニックの気怠い歌声が絡むヴォーカル・アレンジによく表れている。「ニックもジュリアも歌うのが大好きだし、2人の声は互いをうまく補完し合うんだ」とジェイコブ。とりわけジュリアの歌声に恋してしまう人は多いだろう。
「私がインスパイアされるシンガーは、ジョニ・ミッチェル、ブライアン・ウィルソン、そしてカレン・カーペンターよ! お気に入りのアルバムはビーチ・ボーイズの『Smiley Smile』ね」(ジュリア)。
一方、演奏の要になっているのが、アルオペジオからファズまでさまざま音色を奏でるニックのギターだ。ほとんどの曲は、ニックが思いついたリフにメンバーがアイデアを付け加え、膨らませていくらしい。
「ギターについては、ソリッド・ステイトのフェンダー・アンプとフェンダー・ストラトキャスターを使って、クリアでザクザクした音を出すようにしているよ。好きなプレイヤーはジョニー・マーやジミー・ペイジ、ロビー・ロバートソンなど、〈フォーク〉を感じるギタリストだね」(ニック)。
話を聞いていくと、メンバーの挙げるお気に入りアーティストの多くは60~70年代のミュージシャンで、全員が共通して影響を受けているのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやレッド・ツェッペリン、T・レックスとのこと。確かにこの3人のサウンドには、そういったバンドに備わるロックンロールの美意識がしっかり受け継がれているし、そこにエディも惹かれたのかもしれない。最後にグループ名について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「〈サンフラワー・ビーン〉は魔法の言葉だよ、〈アブラカダブラ〉みたいな感じさ」(ジェイコブ)。
どんな魔法なのか? それは聴いてみてのお楽しみということで。
サンフラワー・ビーン
ジュリア・カミング(ヴォーカル/ベース)、ニック・キヴレン(ヴォーカル/ギター)、ジェイコブ・フェーダー(ドラムス)から成るロック・バンド。10代からモデルとしても活動する元スーパーキュートのジュリアを中心に、2013年8月にブルックリンで結成。2015年1月にファーストEP『Show Me Your Seven Secrets』をリリース。7月にはファット・ポッサムから7インチ・シングル『I Hear Voices/The Stalker』を発表し、ヴァクシーンズやパーマ・ヴァイオレッツのUKツアーに帯同。NME誌〈Ones To Watch 2016〉やELLE girl誌〈Buzz List 2016〉に選ばれて話題を集めるなか、このたびファースト・アルバム『Human Ceremony』(Fat Possum/HOSTESS)をリリース。