ロリータ・ヴォイスのヴォーカルを擁する3人組テクノ・ポップ・グループのセカンド・ミニ・アルバム。テクノ・ポップの代表曲にバグルスの“Video Killed The Radio Star”があるように、同時代のメディアやコミュニケーションをテーマとするジャンルだが、ふぇのたすの場合はニコニコ動画やアイドルなどのネットを中心としたオタク・カルチャーの感覚をテーマにしている。例えばメンバーによる〈踊ってみた〉のPVがアップされている“おばけになっても”の〈見えなくなっても視えるよ/なんてこわいこわいこわいこわいような気がするけど/それくらいはわかってほしい〉という歌詞は、メディア上で実像から離れてイメージがひとり歩きすることをおばけに例えて歌っているようだ。
そうしたかわいらしくも批評性が宿った歌詞を、80年代のニューウェイヴやアイドル・ポップ、相対性理論などのインディー・ロックを混ぜたサウンドで聴かせる。SALON MUSICの吉田仁をプロデュースに迎え、リズムは現代的でありつつ80年代的な感覚が同居しているところも聴きどころだ。
そして、アルバム最後の曲でありライヴの人気曲でもある“ありがたす”では〈感謝するならすればそれだけでオッケー〉とまず個人を肯定し、そのうえで〈あなたとわたしをたす+たす+たす〉と繋がっていくことを肯定し、コミュニケーションというテーマにひとつの回答を示している。しっかりしたヴィジョンを持ったポップ・アルバムだ。