前作に引き続き、全編で自身のヴォーカルをフィーチャーした新作だが、そのサウンドはジャズを基調にしながらより尖鋭的なものへ変化を遂げた。電子音が飛び交う“JAPANESE BOY”や、変拍子からワルツへとスイッチする“律動(リズム)”、ビッグバンド編成の“○の∞”、エレクトロニカ調の“ふれる”など多様なアプローチを見せる楽曲には、いずれも複雑なリズムやめくるめくハーモニーが盛り込まれており、先の読めないスリリングな展開の連続に圧倒される。軽やかなAOR“初夏のメロディ”のようにオーセンティックな歌モノとして享受できるナンバーも収めつつ、アルバム全体では、〈歌を中心に据える〉というポップソングのフォーマットからギリギリで逸脱しない大胆なアレンジが際立っているし、そのアグレッシヴな音の海に飲み込まれるような感覚が気持ちいい。ヒップホップなどを吸収しながら拡張する現行ジャズ界の動きに(恐らく)触発されつつ、非凡なソングライティングの才覚を自由に炸裂させた一枚だ。