中塚武

中塚武の活動20周年を飾る、7年ぶりのオリジナルアルバムとして話題の新作『PARADE』。同作から、トヨタ〈プリウス〉のCMに起用されたことで多くの人にとって聴きなじみのある名曲“Dreaming of the Future”がシングルカットされた。その12インチ盤には、FPM(田中知之)、in the blue shirt、原口沙輔という世代の異なる豪華なプロデューサー/トラックメイカーが参加し、三者三様の解釈が施されたリミックスが収められている。

今回はこれを記念して、中塚と、音楽家の先輩として彼を深くリスペクトするin the blue shirtこと有村崚の対談をおこなった。収録は、2023年8月20日に開催されたイベント〈中塚武 20th Anniversary Party『PARADE』〉の翌日に実施。ハッピーなバイブスに溢れたライブで有村が受けた感動から対談はスタートし、2人の浅からぬ共通点から音楽人生論まで、話題は尽きることがなかった。

中塚武 『Dreaming of the Future』 P.S.C.(2023)

 

打ち込み音楽におけるライブの問題

――有村さんは昨日のライブをご覧になっていたんですよね。

有村崚(in the blue shirt)「そうです! (原口)沙輔くんと見たんですけど、〈中塚さんの人徳がとにかくすごい〉と話したんです。あと、沙輔くんはワンマンをしたことがないそうで、〈沙輔くんのキャリアと人気を考えたらやったほうがいいよ。みんな見たいはず〉なんて話もしましたね。

そもそも僕らが作る打ち込みの音楽は、ライブをする音楽じゃないという意識がどうしてもあって。でも中塚さんのライブは、がっつり演奏するじゃないですか」

中塚武 × 五十嵐誠 with Big Bandの2021年のライブ動画

中塚武「曲を作っている最中は、ライブのことはまったく考えていないんだけどね。だから〈これ、本当にやるの!?〉ってメンバーに言われる(笑)」

有村「僕にとって中塚さんはカットアップの先輩なんですけど、ビッグバンドを従えての演奏も中塚さんの本懐だったと改めて気づきました」

中塚「有村くんだって、ギターがめちゃくちゃうまいじゃん」

有村「いやいや。対外的に弾く機会はないですし、意図的に避けているところもあるんです」

中塚「どうして?」

有村​「面倒くさいから……。練習するのが嫌で(笑)」

中塚「わかる(笑)!」

有村​「あとラップトップの前でギターを弾くライブって、良くなった試しがなくて。

ライブで出す音の何割を人間が演奏しているかで、あかんくなる割合があるんですよね。9割が生演奏で1割が同期音源、というライブはよくあるじゃないですか。でも生演奏の割合を縮小していくと、急激におもんなくなる瞬間があるんです。例外的に歌やラップやと9割が同期でもいけるんですけど、それがギターになると〈ジャイアンリサイタル〉になっちゃう。打ち込み音楽のライブはマシーンオンリーにするか生演奏の割合を工夫するかしかなくて、成功例が少ないんですね。そういうインチキライブを、僕はすごく研究していて(笑)」

中塚「面白い(笑)! DJセットのことを〈ライブ〉と言う人もいるよね」

有村​「僕もそのタイプです。選曲をリアルタイムでしないとか自分の曲しかかけないとかそういう意味での〈ライブ〉なんですが、一般的な意味でのライブ性はないので難しいですよね。

たとえばライブ音源を、つまみを正確に操作しないとうまく鳴らない状態にしておくと、手順を覚えられないからうまくいかない。逆に音源をかけるだけだと何もしていないことになる。ライブでどれぐらいのことをせなあかん状態にしておくか、リスクをどれぐらい背負うかが、インチキライブの肝なんです(笑)」

〈in the blue shirt 3rd album “Park with a Pond” Release Party〉のダイジェスト動画

中塚「なるほどね。クインシー・ジョーンズのように全編生演奏で本人名義なのに、本人が何もやらないタイプのライブもあるよね。〈ジェイムズ・ブラウンは何もやっていない〉と言う人もいるくらいだけど」

――指揮者やプロデューサー名義のライブということですね。

有村​「現場監督と大工の関係ですね。〈現場監督は建築物を建てていない〉と言うのは野暮ですから、実際は作業する人もガントチャートを引いているだけの人もいるわけで、関わっている人全員が〈建てている〉んです」