自身が主催するプロジェクト・QYPTHONEでの活動を経てソロデビュー。自身の作品に加えて様々なアーティストへの楽曲提供や、CM音楽、ドラマ/アニメ/ゲーム音楽といった幅広い分野で活躍するサウンドクリエイター、中塚武。彼のソロ活動20周年を記念した最新アルバム『PARADE』がリリースされた。
この作品では、Disc 1にオリジナル曲を、Disc 2にこれまでの提供曲から楽曲を選んだ中塚武ワークスを収録。20年の活動の中で広がった広大な音楽性をブレンドして聴かせてくれる。
今回は、キャリアの初期からの盟友であり、田中知之(FPM)とともに携わった東京オリンピックの開会式の音楽制作でもともにタッグを組んだi-depのナカムラヒロシを迎え、対談形式でお互いの20年間や、最新アルバム『PARADE』について聞いた。
2000年代の出会い、尊敬し合う間柄
――まずはお2人が知り合ったきっかけについて教えてください。おそらく、中塚さんがソロデビューをして間もなく、ナカムラさんがi-depでデビューしたばかりの2004~2005年頃に、イベントで一緒になったことが最初かと思うのですが、当時のことを覚えていますか?
中塚武「めちゃくちゃ覚えてます。吉祥寺のSTAR PINE’S CAFEで、僕がDJをやって、i-depがライブで出演していて」
ナカムラヒロシ「そうそう。それでちょっと話したのが最初のきっかけでした。でも、そのときは僕らが次の日に大阪でライブをする予定だったんで、〈またー!〉と言ってすぐに別れたんですよ」
中塚「そうだそうだ」
ナカムラ「あと、僕はその前にも、実は渋谷のSECOで中塚くんのライブを一方的に観ていました。自分がプロになる前から中塚くんの音楽は聴いていたので、最初は敬語で話していましたけど、中塚くんの人柄もあって、すぐに〈中塚武さん〉という存在から、〈中塚くん〉に変わっていったイメージですね」
――一方で、中塚さんがi-depやナカムラさんを知ったのはいつ頃だったんでしょう?
中塚「ライブはそのとき初めて観させてもらったんですけど、i-depは曲もいいし、もともと〈すごくかっこいいな〉と思って聴いていました。当時、一世を風靡していたんですよね」
ナカムラ「いや、そんなことないやろ(笑)」
中塚「だってさ、山手線に乗っていてi-depのメッセンジャーバッグを持っている人を見かけたんだよ。〈音楽という枠だけじゃなくて、i-depというブランドになってるんだな〉と感じて、同じミュージシャンとしてちょっと落ち込んだりしました(笑)。とにかく、知り合う前から〈すごいな〉と思っていたんです。
そしたらちょうど、STAR PINE’S CAFÉのイベントで一緒になって、しかもその日、ヒロシがMCで〈今日は中塚くんと一緒で嬉しいです〉と言ってくれて。そこで〈友達になれるかも〉と思ったんです。ライブ終わりに、ステージ裏の階段のようなところで挨拶して、話すうちにすぐに打ち解けました」
――当時から、お互いの音楽に共感する部分などもあったんでしょうか?
ナカムラ「僕はリスナーとして中塚武の音楽を聴いていたときから、〈この人は実験しているのにポップでかっこいいな〉と思っていましたね。見事に研磨された音楽をやっている、すごく頭がよさそうな人だ、と思っていました。あともうひとつ、そこはかとない育ちのよさも感じていて。
でも、実際に会ってみたらそうでもなかった(笑)。実際の中塚くんは人間味があるし、飲めばちゃんと酔っ払うし、ギャップがすごかったんです。〈この人、こういう人だろうな〉というイメージとは全然違ったけれども、だんだんその音楽の本質や、〈こういう人だからこういうことができるんやな〉ということがわかってきたような感覚です」
中塚「そういうふうに思われがちなだけなんだよ(笑)。
i-depの曲はTVでも街中でもかかっていて、僕自身も自分で買って聴いていましたけど、とにかく音楽に勢いがあるな、と思っていました。ポップでカラフルで、好きな要素が満載だけれど、同時に流行りの音楽ともどこか違って、すごく勢いを感じたというか。
これはバンド形態のプロジェクトということも大きいと思うんですけど、ヒロシとCanaちゃんの仲良しなんだけれども緊張感があるような雰囲気も魅力的で、〈アルバムを1~2枚出して辞めちゃうんじゃないか〉というぐらい、奇跡みたいなバランスで成り立っているような印象でした。お互いに、当時は触ったものを傷つけるような、若さゆえのトゲトゲしさがあったような気がします」
ナカムラ「あったかなぁ(笑)?」