マーヴィン・ゲイ“Sexual Healing”のヤバいリミックスなどで早耳の注目を集めつつ、ソフトな4つ打ちと控えめな鳴り物を柔和なテンポで展開する“Firestone”(2014年)から世界中に吹き込んできたトロピカル・ハウスの爽風。そのムーヴメントを紡いできたカイゴはノルウェー出身の24歳だ。この待望のファースト・アルバムも、ジョン・レジェンドコーダラインフォクシーズトム・オデールら多彩な歌い手を配しつつ、ある種の金太郎飴っぽさすら追い風にするほどのビューティフルなパラダイス・ポップ集となっている。彼のチルな楽園が提案するのはハードなダンス音楽への単なるカウンターと位置付ける以上のマイルドな普遍性で、EDMからBGMへ……とかうっかり言ってしまいそう。すでにカイゴ自身がフィフス・ハーモニー“Write On Me”を手掛けている通り、多様な場面に柔らかくフィットし、鼓膜に優しくヒットするこの魔法は、より広い方面に伝播していくはずだ。なんか危険な気もするけど気持ちいいので仕方ない!