〈誕生〉から〈飛び立ち〉、そして〈結集〉。これまでに発表した3枚のシングルのジャケットをストーリーのあるアートワークで彩ってきた綾野ましろ。彼女が選ぶ4つ目のテーマは〈解放〉だ。純白の羽根、大人びた黒と白の衣装に象徴されるその楽曲“Lotus Pain”は、約8年ぶりにTVアニメ化されたコミック「D.Gray-man」の新シリーズ「D.Gray-man HALLOW」のエンディング・テーマ。原作と前シリーズの大ファンだったというましろの夢がひとつ叶ったコラボレーションだ。
「小学校のときに観て、〈カッコイイ!〉と思って登場人物のイラストを描いたりしてました。ネットの世界にハマり込んだのもその時期だし、いまの私にとっての〈始まり〉とも言えるアニメですね。一緒に人生を歩んできたような作品の曲を歌わせてもらえて、生きてて良かった!と思いました（笑）」。
作曲は、彼女を発掘して世に送り出したサウンド・プロデューサーの安田史生。これまでのシングルの表題曲はアップテンポのものが続いたが、“Lotus Pain”はグッと胸に迫るドラマティックなロック・バラード。カップリングなどでチラ見せしてきたバラード・シンガーとしての凄みを前面に打ち出す、壮大な一曲だ。
「キー設定は、アップテンポのアゲ曲よりは歌いやすくしてあります。その代わり、Aメロ、Bメロはいつもより抑揚をつけて、歌詞を大切に歌ってますね。ライヴで盛り上がる曲を歌うときはコミュニケーションが大事なので、アゲ曲は〈バン!〉とお客さんにぶつけるように歌うんですけど、バラードを歌うときには、お客さんとの中間に向かって歌ってる感じ。バラード曲をお客さんにぶつけてしまうと、強すぎるなって思うんです。これはライヴをやってきて気付いたことなんですけど、距離感が大事だなと思ってます」。
透明感溢れるパワフルなハイトーンの魅力はそのままに、より進化した歌唱スタイル。その歌詞を、初めてましろ自身が単独で手掛けたのも大きな挑戦だ。モチーフは、アニメのなかにも登場する〈蓮の花〉。棘のある硬質な言葉を使いながら、登場人物の内面の葛藤をきめ細やかに、花言葉も織り込んで綴るイメージ豊かな世界観。作詞家として目覚めたね、と水を向けると、〈これからガンガン書きます!〉と頼もしい言葉が返ってきた。
「歌詞は、今回放送されるエピソードを改めて読み込んでから書きました。神田ユウとアルマ（共に『D.Gray-man』に登場するキャラクター）は魂の奥底で惹かれ合っているのに、結局戦わなきゃいけない。その切なさと、お互いを思う深さを表現したかったんですね。悲しい二人の運命を描いてるんだけど、最終的にはお互いを理解して、救われる感じになってます。アニメの先行上映会の時に初披露したときは、物語の内容と照らし合わせて感動してくれて、涙ぐんでくれてる方もたくさんいて。自分がこのアニメを好きだから出てきた言葉もたくさんあったので、それが伝わったのかなと思いました」。
カップリングの“marionnette”は、キャッチーなダンス・ポップに〈もしも人形が心を持ったら?〉というテーマを乗せた、胸を締め付けるようなファンタジー。そして“tiny wings”は、歪んだギターがリードする躍動的なロック・チューンに、互いに寄り添って生きる人間の弱さと強さを描いた歌詞がピタリとハマっている。3曲すべての作詞を手掛けた本作で、綾野ましろはアーティストとして確実に一皮剥けた。〈解放〉の先に何が待つのか、いよいよ飛びはじめた新世代ヒロインの動向に注目だ。
「今回は、女の子のファンが多いアニメに関わらせてもらったのも、とても新鮮でした。同世代の女子を巻き込んでいけたらいいですよね。海外の人にも注目されているアニメなので、海外のファンの人とも交流を深めたいです。衣装に黒も入って、ちょっとダークなところも見せられたし、いままでにも増して自信作です!」。
綾野ましろ
北海道は洞爺湖出身、札幌在住の女性シンガー。2014年10月、TVアニメ「Fate/stay night」のオープニング・テーマを収めたシングル“ideal white”でデビュー。2015年4月にはアニメ「ガンスリンガー ストラトス」のオープニング曲“vanilla sky”を、8月にはPCゲーム「ガンスリンガー ストラトス リローデッド」のテーマ・ソング“infinity beyond”をシングル・リリースし、10、11月には北海道と東京で初のワンマン・ライヴを開催。2016年1月には同公演の音源とデビュー前に制作された楽曲で構成されたコンセプト・アルバム『early days』を発表。10～11月に札幌・東京・大阪で行われるワンマン公演を前に、ニュー・シングル“Lotus Pain”（ARIOLA JAPAN）を8月3日にリリースする。
