前作『小さな生き物』を聴き続けてこのニュー・アルバムを待ちわびたファンなら、その温度感の理想的な通底にすぐ気付き、興奮で胸が震えるはず。〈負けないよ〉と繊細に歌っていた生き物が、冒頭曲“醒めない”でいまの温まったモードを〈さらに育てるつもり〉と宣誓するのだから。しかも、ロッキッシュに振り切った『ハヤブサ』(2000年)以上の太く締まった音塊で。スピッツが〈俺〉〈ロック〉って発すだけでやっぱりなぜか高まる。力強い8ビートと優しいアルペジオに痺れる“ナサケモノ”、悩みを蹴散らす眩しい言葉や疾走感に泣き笑いしてしまう“グリーン”と、感情のメーターは上がりっぱなし! 一方で、“みなと”“コメット”“雪風”といったミディアム・ナンバーも瞬く間に沁み込むパワーがあるし、“ヒビスクス”“ブチ”など意表を突くアレンジも随所に。それにしても、ここまで喜びを露にした彼らは初めてでは? 誉めるための文字数が足りないので、あとは聴いてほしい。〈醒めない〉というより、きっと熱くなる。
スピッツの新作は、〈醒めない〉というよりきっと熱くなる! 力強い8ビート曲から沁み入るミディアムまで、これまでになく喜びを露にした一枚
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