Mikikiは、年末企画として30年前の音楽シーンを振り返り、こちらの記事で1993年の洋楽名盤を紹介した。その邦楽版として、今回は同年の邦楽/J-POPの名曲を30曲リストアップ。ヒット曲も、ヒットはしなかったものの、その後に評価された重要曲なども選んだ。

〈J-POP〉という概念が定着し、歌謡曲の時代から完全に切り替わり、ミリオンヒットが連発され、新たな才能が多数活躍し、バブル崩壊の最中にありながらも充実したムードが充満した93年の邦楽シーン。音楽的な多様化も進んだ時代の空気感が伝わると思う(掲載は五十音順)。

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ECD “レイシスト”

ECD 『WALK THIS WAY』 MAJOR FORCE(1993)

名曲“ECDの東京っていい街だなぁ”も聴けるセカンドアルバム『WALK THIS WAY』の収録曲。レイシストやレイシズムといった英語が日本では一般的ではなかった時代にそれをタイトルに掲げ、日本社会に蔓延る人種差別や障害者差別にノーを突きつけ、戦争犯罪なども批判したリリックが痛烈だ。〈信じる人はとびきりの/選ばれし人つまりレイシスト〉というフックも印象的で、陰謀論やカルト的な価値観を攻撃している点も先駆的で予言的。ドープなビートはDJ PMX。

 

小沢健二 “天使たちのシーン”

小沢健二 『犬は吠えるがキャラバンは進む』 イーストワールド/東芝EMI(1993)

フリッパーズ・ギターの解散後にソロデビューアルバムとして発表した『犬は吠えるがキャラバンは進む』の中でも、ひときわ目立つ13分強の大曲。カーティス・メイフィールドの“Tripping Out”風のリズムで淡々と進行していくオザケン屈指の名曲で、生物や物質のエコシステム、文化のバトンパスなど、達観すら感じる壮大かつ身近な生命観が歌われる。東京スカパラダイスオーケストラの故・青木達之がドラムを叩いていること、大槻ケンヂがカバーしたエピソードなどでも知られている。

 

キミドリ “自己嫌悪”

キミドリ 『キミドリ』 FILE(1993)

久保田武(クボタタケシ)、石黒景太、青木誠からなる伝説的なヒップホップトリオのファーストミニアルバムの収録曲。〈主義・主張なんて俺はないけど自己だけは確立したいよ〉〈社会派なんてクソ食らえ/社会の前に我に返れ〉〈結局他人にのまれてる〉といったリリックが象徴的だが、揺れる自己、虚無感、自己省察が前面に押し出された、当時では珍しい、それゆえ先駆的なラップソングだ。これらのリリックをどう捉えるかは意見が分かれるところだろうが、SNSでの発信が容易になった今こそ見つめ直す価値はあるだろう。ビートも素晴らしい。やけのはらがカバーしたことでも有名。

 

工藤静香 “慟哭”

工藤静香 『Rise me』 ポニーキャニオン(1993)

昨年、24年ぶりに「NHK紅白歌合戦」に出場し娘Cocomiと共演した、元おニャン子クラブの工藤静香の代表曲のひとつ。エグみのあるシンセブラスが耳に残る、この頃特有のロック調のアレンジだが、何よりも印象に残るのはサビ。名フレーズ〈ひと晩じゅう泣いて泣いて泣いて〉の強烈さは、さすが中島みゆきだ。作編曲は名匠・後藤次利。93万枚を売り上げた。

 

class “夏の日の1993”

class 『Mellow Prism』 アポロン(1993)

津久井克行&日浦孝則のデュオによる、170万枚以上を売り上げたヒットシングル。ドラマ「君といつまでも」のオープニングテーマ曲で、セゾンカードのCMソングでもあったが、有線放送などにリクエストが多数あったことがヒットに繋がったという。オーケストラルヒットを用いた壮大でドラマティックなアレンジ、津久井の少し掠れたハスキーな歌声が強い印象を残す。93年の夏の日、見知った女性をプールで見て惚れ直す、という恋愛関係を描いた歌詞はキラーフレーズばかりだが、何よりもその年のことを歌った点がユニーク。作詞は松本一起、作曲は佐藤健、編曲は十川知司。