藍坊主はいま、バンド史上最大の転換期を迎えている。これまでの環境を離れて自分たちのレーベル=Luno Recordsを設立し、メンバー4人だけの再出発。ライヴの動員、CDセールス、ファンの熱気――欠けているものは何もなかった。なぜ彼らは安定した環境を捨て、新たな冒険へと踏み出す決心をしたのか?

 「もっと音楽を直で届けられる場が欲しいというか、届け方にまで血を通わせるようにするには、自分たちで管理したほうがいいと思ったんですよね。〈できるのか?〉という思いもありましたけど、4人がしっかり音を鳴らすことがいちばん大事で、そこを信じればなんとかなるという確信はありました」(田中ユウイチ)。

 「気持ちとしては、〈ワクワク〉という言葉がいちばん近いと思います。〈これからどうしよう?〉とか、悲壮感とか、そんなのは全然なかったですね。〈いまが最高! いまだからこんなことがやれる!〉という、何だかわからないけど湧き上がるような気持ちがありました」(渡辺拓郎)。

藍坊主 Luno Luno(2016)

 大きく変わったのは2点。録音からミックスまで、すべて自分たちでやったこと。そして、セルフ・プロデュースを突き詰めて、〈歌の力〉を徹底的にクローズアップしたことだ。

 「ドラムを叩いてるときの呼吸を感じられる空気感、ナマ感を大事にしました。いままで使っていた機材をまったく使わないで、〈何もしてないけど、良いね〉という状態を作ることから始めて。だから、音が凄く近いところで聴こえるんですよ」(渡辺)。

 「今回は藤森(真一)が、〈このメロディーにはこの音が合う〉とか、〈一緒に分析しよう〉って提案してくれたので。ロジカルに分析することで、響く歌には理由があるんだって、よくわかりましたね。それが曲作りにも活きてます」(hozzy)。

 目の前で鳴っているように生々しく迫力のある音と、よりストレートに飛び込んでくる歌と言葉。ソングライターである藤森とhozzyが生み出した曲も、原点回帰のシンプルなバンド・サウンドの上にデビューから十数年の成長がプラスされ、かつてないほど瑞々しく率直で、ポジティヴな響きを帯びている。

 「“魔法以上が宿ってゆく”という曲が出来たときに、吹っ切れた感じがしました。サビの〈立ち上がろう〉とか、こんなに直接的で前向きな言葉って、これまでは書くのが嫌だったんですよ。でも、いまは全然抵抗ないし、歌詞のテーマもすごく前向きで、〈いま俺が真剣に歌詞を書こうとしたら、感謝の言葉が自然に出てくるな〉と思ったんですよね」(hozzy)。

 「〈メッセージ・イン・ア・ボトル〉って、ありますよね。誰に宛てたわけでもなく、瓶に詰めて流す手紙のことですけど、ユウイチが〈今回の曲はそれみたいだね〉って言ったんですよ。それが1曲目の“ボトルシップ”に繋がってくるんですけど、結局人間は、誰かが作ったもののなかでしか生きられない。僕自身も誰かの創造物だし、〈作られた世界〉だと思っていたものが、〈誰かが作ってくれた世界〉だと思えるようになってきた。いまはそこで存在させてもらっているという感じがあるからこそ、宛名を書かずに放り投げても、行き着くべきところに行き着くだろうと思えるので。hozzyが言うように、感謝の思いが詰まったアルバムだと思います」(藤森)。

 『Luno』とは、国際共通言語のエスペラント語で〈月〉を指す言葉。自分たちは太陽のようなバンドではないが、「太陽に反射した光で間接的に、迷っている人や、同じような感覚を持つ人に届けばいい」(hozzy)というバンドの理念を再確認するこのタイトル――そう、本作は藍坊主の第2のデビュー作なのだ。

 「聴いてくれる人との距離の近さを伝えたいというのは制作中にずっと思っていたことなので、ぜひライヴに来てほしいですね。みんなをステージに引っ張り上げるつもりで演ろうと思ってます。もちろん、本当に上がってこられたら困るので、感覚的に、ということですけど(笑)」(藤森)。

 


藍坊主
藤森真一(ベース)、hozzy(ヴォーカル)、田中ユウイチ(ギター)、渡辺拓郎(ドラムス)から成る、小田原市出身の4人組。2003年に初作『藍坊主』を発表し、2004年には『ヒロシゲブルー』でメジャー・デビュー。以降は、2011年の日本武道館公演をはじめとするライヴ活動も精力的に行いながら、コンスタントにリリースを重ねる。2014年には通算8枚目のフル・アルバム『ココーノ』を発表。結成15周年を迎えた2015年にはLuno Recordsを設立する。ライヴDVD「aobozu TOUR 2015 ~時計仕掛けのミシン~ at 渋谷公会堂」から2枚のシングル“降車ボタンを押さなかったら”“魔法以上が宿ってゆく”を経て、このたびニュー・アルバム『Luno』(Luno)をリリースしたばかり。