2月に“Boom ADD”を公開した際には、〈スーパーボウル〉の事案がまだ尾を引いていたのか……とも思ったものだが、いずれにせよ件の生放送中に〈flip the bird〉したあたりで潮目が変わったのは確かだろう。M.I.A.の通算5枚目のアルバムは、本人によると〈アルバムという形態では最後の作品〉になるという。曲名通りのテーマとMVも物議を醸した“Borders”をオープニングに、ブラックスターディプロ各々による2種のトラックで収められた“Bird Song”や、ゼインを招いたポロウ・ダ・ドン制作の“Freedun”、スクリレックスとのコラボ、恩人ジャスティーン・フリッシュマンとの共作など、多様なトピックとメッセージを持ち前のエスニック・バンガーで届ける刺激的な作りは変わらない。一周してまたモダンなダンスホールやバングラの飛び交う格好良いサウンドに身を委ねていると、ここ10年で生まれた音のトレンドの前提に彼女が存在していたことにも改めて気付かされて遠い目にもなる。まあ、本当に最後だとは思っていないけれど。