初のオーケストラ作品はライフワークである〈宇宙〉がテーマ
2005年にモンペリエ国立管弦楽団と共演を果たしてから12年。その間、世界各地のオーケストラと同じ舞台に立ち、テクノの可能性を追求してきたジェフ・ミルズが、初めてオーケストラのために作曲を行ったアルバム『Planets』。ホルスト/冨田勲が残した代表作と同テーマに果敢に挑むミルズは、更なる進化を試みるために実際の惑星の構造、素材、サイズ、質量、密度など科学的データを調べたというから、その意気込気は並々ならぬものだ。
アルバムには一人で制作したエレクトロニックVer.と、今作のパートナーであるポルト・カサダムジカ交響楽団と収録したオーケストラVer.がそれぞれのディスク(初回生産限定盤はブルーレイ・ディスクに収録)に収めれている。当然主となるのは後者である。しかし、本来ならばこのタイミングで世に出ることはないであろう、たたき台としてスケッチしたエレクトロニックVer.を敢えて収録することで変容の過程を曝け出し、作品の理解をより深めさせることを狙ったようだ。この拘りが〈テクノとクラシックの融合〉という安易な形容を撥ね退けるのは言うまでもない。
スティーヴ・ライヒやテリー・ライリーといったミニマル音楽の先駆者たちを想起させたり、70年代のSF映画に迷い込んだノスタルジーもあるが、先鋭的な電子音やビートが孤立することなく、オーケストラの一部として同化。それは過去のコラボレーションと呼ばれてきたものが何だったのかと問い正したくなるほど、自然なかたちで溶け合い、ジェフ・ミルズの脳内にある各惑星や宇宙空間を鮮やかに描き出している。
ジェフ・ミルズのライフワークである〈宇宙〉という壮大なテーマ、そして長年にわたり試行錯誤してきたオーケストラとのコラボレーション、この2つが今作で結実したといっても過言ではない。