アムステルダムの生んだトラップ・モンスターが待望のニュー・アルバムを完成! 豪快なドロップが牙を剥き、フロアの熱狂に爪を立てる日本上陸の日はもうすぐそこまで……

〈EDM〉という言葉を聞いて、数年前のようなエレクトロ・ハウスやブロステップといった限定的なスタイルのみをイメージしている人も流石にそうはいないと思うが、実際にその趨勢を楽しみながら各々の動向を追いかけている人なら、常に変化を続けるシーンの盛り上がりを、フューチャー・ハウスやトロピカル・ハウス、トラップといった例で説明することだろう。一昨年あたりからのEDM内トレンドとしては全体的なレイドバック傾向がポップ・マーケットで受容されたこともあり、メロウなムーンバートンやディープ・ハウス~トロピカル・ハウスの隆盛は明らかだが、それもまたジャンル内での変化の一つの流れに過ぎない。そうしてマイルドな音像がメインストリーム化していく一方で、ハードかつアグレッシヴなベース・サウンドも着実に進化しているのである。その尖鋭となるのがトラップ・ミュージックであり、そのトップに立つ一組こそが、ここで紹介するイエロー・クロウというわけだ。

YELLOW CLAW Los Amsterdam Mad Decent/avex EDM(2017)

 イエロー・クロウといえば、昨年5月に初来日を果たし、ageHaのパーティー〈WORLD CLASS〉でSHINTAROやbanvoxとステージを分け合った後、年明けにはディプロがヘッドライナーを務める〈electrox 2017〉にて再来日したばかり。さらに全米最大のEDMフェス〈Electric Daisy Carnival〉の日本版として、ゴールデンウィークに幕張で開催される〈EDC Japan 2017〉への出演も決定した。それに前後して、彼らの主宰するバロン・ファミリーのショウケース盤もリリースされるなど、俄に日本でも最注目の存在に急浮上してきた感がある。そんなグッド・タイミングで日本リリースされるのが、彼らのニュー・アルバム『Los Amsterdam』なのだ。

 そのアルバム名の通り、オランダのアムステルダムを拠点とするイエロー・クロウは、もともと2010年に結成されたユニット。当時のメンバーはジム・アースギアとニズルのDJコンビに、MCのビジーを加えた3人組だった。結成から程なくして地元の人気クラブを中心に人気を集めはじめた彼らは、2012年頃から自身の音源もリリースするようになる。当初はオランダらしいハードコア~ハードダンス寄りのサウンド・デザインで人気を博していたが、そこからハッキリと自分たちのカラーを打ち出すようになったのは、2013年にディプロ主宰のマッド・ディセントと契約して以降だろう。

 多くの人が彼らを知るきっかけとなったEP『Amsterdam Trap Music』は、同じマッド・ディセントから前年に出ていたバウアー“Harlem Shake”を追いかけるような格好で、ブロステップに替わる異形のEDMベースとしてのトラップの定型を広く知らしめることとなった。〈Tomorrowland〉出演も経た夏には2作目の配信EP『Amsterdam Twerk Music』を投下。これはトゥワークを謳った楽曲集で、もともと(ディプロ同様に)ヒップホップを下地に持つ彼ららしいブーティーなバウンス~ベース・サウンドを内包する懐の深さを示す試みとなった。その数か月後には本国オランダの老舗スピニンから、女性シンガーのロシェルが歌うシングル“Shotgun”をリリース。ドラマティックな歌の展開を備えたこのトランシーなアンセムはオランダも含む欧州各国でTOP10入りする大ヒットを記録。彼らのトラップ作法がメインストリームでも機能しうるポピュラリティーを備えていることは、ここで早くも証明されたというわけだ。

 以降の歩みはさらにポピュラーなものだろう。2014年にはスピニン傘下に自主レーベルのバロン・ファミリーを設立する一方、引き続きマッド・ディセントで制作した『Amsterdam Trap Music Vol.2』からはディプロ×LNY TNZとの連名曲“Techno”がヒット。ここではラッパーのワカ・フロッカ・フレイムを迎えたことで、アトランタなどUS南部ヒップホップのイメージやサウンド・デザインを源流とするトラップが、EDM範疇での進化を経て源流に影響を与えるという還流の作用を演出した(ヒップホップ側で若い世代が改めて〈トラップ〉を強調しはじめたのはこれ以降じゃないだろうか)。彼らは、タイガとタイ・ダラー・サインを迎えたDJマスタードとのコラボなど、トラップという言葉でヒップホップとヘヴィーなEDMベースを繋ぎ合わせ、さらに多様なゲスト陣を独自の音世界に引き込んで初のフル・アルバム『Blood For Mercy』(2015年)を完成させた。今回の『Los Amsterdam』はそれ以来のセカンド・アルバムとなる。

 間にはビジーの脱退もあったものの、ワールドクラスに成長したDJデュオとしてのイエロー・クロウが勢いを失うはずもなく、前作以上に焦点の絞れた豪華ゲスト陣と共に、キャッチーかつエッジーなサウンドを容赦なく展開。GTAやギャラクシー、バロン家族のセスコーといったクリエイターとの共作も交えながら、別掲しているような多彩な顔ぶれとポップの現在進行形を開陳してくれている。今回の来日を機に、その圧倒的な破壊力に触れてみてはいかがだろうか。

 

『Los Amsterdam』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

イエロー・クロウの参加曲が聴ける作品を一部紹介。

 

イエロー・クロウのギザギザな爪痕と『Los Amsterdam』関連アクトの作品をご紹介

YELLOW CLAW Yellow Claw -Special Japan Edition- avex EDM(2017)

新作のドロップに合わせてリリースされた日本編集盤は2013~15年の定番を集めたベスト・チョイス。出世作『Amsterdam Trap Music』や『Amsterdam Twerk Music』など配信のみだった初期のマッド・ディセント音源を中心に、代名詞的なビッグ・ヒットの“Shotgun”に“Till It Hurts”といったスピニン発のシングル、リミックスなどを加えたもの。粗暴な破壊力にやられながら、その鋭利な爪痕を再確認してほしい。 *出嶌

 

LAIDBACK LUKE Focus Cloud 9(2015)

EDMの源流を作り上げ、ダンス・ミュージック大国オランダの礎となったレイドバック・ルーク。そんな同郷の大先輩による久方ぶりのアルバムに、YCはバロン・ファミリーのダートキャップスを引き連れて表敬訪問。レイヴィーなビッグ・サウンドで大はしゃぎ! *青木

 

VARIOUS ARTISTS OWSLA Worldwide Broadcast OWSLA(2016)

気鋭のプロデューサーを豊富に抱えるOWSLAのCDショウケース第2弾に、YCはサン・ホロとのコラボ曲“Alright”を提供。サン・ホロのドリーミーな感性と、YCのエッジの効いたベース・サウンドが溶け合って生まれる浮遊感は、YCの新作にも通じる部分がある。 *青木

 

YELLOW CLAW Blood For Mercy Mad Decent(2015)

世界中のビッグ・フェスからラヴコールを受ける真っ只中に発表されたこの初のフル・アルバムは、ラウドでヘヴィーなトラップやハードダンスとポップスを威勢良くミックスした代物で、ビルボードのダンス・チャートでは1位を奪取。プッシャT、DJマスタード、タイ・ダラー・サイン、ティエスト、ビーニ・マンほか、大物が並ぶゲストの顔ぶれからも一過性ではない本物の実力を推し量れるだろう。 *青木

 

GTA Good Times Ahead Warner Bros.(2016)

ヴィンス・ステイプルズが参加した本作収録の“Little Bit Of This”をYCがリミックスし、その返礼にGTAはYCの新作で“Hold On To Me”に参加。驚くべきはただの仲良しではなくGTAもマッド・ディセント発信という点。ディプロの繋ぐピープル・トゥリーは広大だ。 *青木

 

ZEDS DEAD Northern Lights Deadbeats(2016)

スピニンで出したオリヴァー・ヘルデンスとの“You Know”で知られるカナダのデュオ。これまた元はマッド・ディセントで注目された人たちで、この初作にはディプロやエリファント、プッシャTも参加。直接の縁はないが、YCと似たルートから生まれた一作だ。 *出嶌

 

DJ SNAKE Encore DJ Snake/Interscope/ユニバーサル(2016)

メランコリックなミディアムを得意とするスネイクと、トラップ/ハードスタイルが十八番のYCは水と油のようだが、両者が交わると楽曲は唯一無二の輝きを放つ。共にヒップホップの影響を受けているだけでなく、躍進のきっかけがマッド・ディセントなら納得。 *青木

 

MIGOS Culture Quality Control/300(2017)

上掲のDJスネイク盤で“Oh Me Oh My”に客演したATL産トリオから、イエロー・クロウの新作にはクアヴォがソロ参戦! EDM経由で肥大化してラッパーの元に還ってきた〈トラップ〉の循環を象徴するパフォーマンスがエグい。このアルバムもやっとCDが出るっぽい! *出嶌

 

VARIOUS ARTISTS The Barong Family Compilation WAKYO(2017)

YC主宰レーベルの音源をまとめた嬉しい日本編集のコンピ。冒頭に収められたYCとマイティフールズによる能天気なヒット曲“No Class”が物語るように、ハード・ストンピンでバンギンな味付けが得意なレーベルだが、フューチャー・ベースやムーンバートンを吸収したチェイス& YCの“Stranger”や、ファウンテイン・オブ・ユースの“Lost Of Life”は、レーベルの新しい方向性を提示した注目曲である。 *青木