アフロ=アメリカンの、AAによる、AAのためのCreative Music
このバンド、ハリエット・タブマンのメンバー、ブランドン・ロス(eg)、メルヴィン・ギブス(eb)、J.T.ルイス(ds)は、三人ともがアフロ=アメリカンであり、共に60年代、70年代の文化的、政治的成分が身体に染みた人たちである。彼ら三人がバンドを結成したのは90年代、NYのジャズ・アンダーグラウンドのセンターがニッティング・ファクトリーやトニックだった頃、9.11以前のNY、ポップ・アンダーグラウンドのバブルが沸騰していた頃だった。
ブランドンは、1997年にグラミー賞を受賞したカサンドラ・ウィルソンの『ニュー・ムーン・ドーター』(とその前作『ブルー・ライト』)に参加し、プロデューサーのクレイグ・ストリートとともにようやく注目を集めていた頃だった。一方でメルヴィンは、ロリンズ・バンド、アンビシャス・ラヴァーズに参加し、カエターノ・ヴェローゾのレコーディングなどなど、ジャンル、スタジオ・ミュージシャンという枠も超えて活躍していた。さらにJTは、ホイットニー・ヒューストンやティナ・ターナーといったメジャーなR&Bアーティストをサポートしつつ、デヴィド・マレイ、ドン・プーレンといったロフト・ジャズ世代のミュージシャンとともに、NYジャズ・アンダーグラウンドでも大活躍していた。
この三人を結びつけたのは、おそらくこの三人から好かれつつ、毛嫌いされていたであろうプロデューサー、キップ・ハンラハンだった。JTとブランドンは、キップの代表作 『アラビアン・ナイト』に参加していたし、メルヴィンは、キップが制作したコンピ『ポール・ヘインズ/ダーン・イット』にD.K.ダイソンとのバンドでトラックを提供していた。
そして、振り返ってみると過去20年の間にたった三枚のアルバムしかリリースしていないにもかかわらず、活動を持続させてきたのは、今回ゲストで参加しているレオ・スミスのようなアーティストが守り、発展させてきたアフロ=アメリカン・カルチャーへのリスペクトであり、自覚的なコミットメントを表明し続ける場所が必要だったからだろう。重い音、だ。