タンジェント・ピアノはTangentと呼ばれる木片で弦を叩いて音を出す、チェンバロとフォルテピアノの中間に位置するような打弦楽器。その涼しげな音色はダルシマーにも似て繊細だが、クラヴィコード同様、奏者の技量次第で豊かな表現が可能である。フォルテピアノ界の異才リュビモフは、タンジェント・ピアノで奏でるのにうってつけの作曲家としてC.P.E.バッハを選び、アルバムタイトルを(幾重もの意味を込め)『Tangere(触れる)』とした。多感様式ならではの変幻自在なファンタジーが、ここではリュビモフの指先によってよりいっそう個性的に彩られ、聴き手の琴線に触れるのである。
アレクセイ・リュビモフ 『C.P.E.バッハ:幻想曲、ソナタ、ロンド&ソルフェッジョ』 フォルテピアノの異才がタンジェントに挑む
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