伝統音楽〈ホローポ〉を世界に向け発信するコロンビアの国民的楽団が熱い!
「最新アルバム『オリノコ』はジャノ音楽に対するトリビュート・アルバムだ。伝統的な音楽ではあるが、だからといって古いものとして聞くのではなく、まったく新しい音として聴いてほしい」と語るのは、先ごろ来日していたコロンビアのホローポ楽団、シマロンのリーダーでアルパ(ハープ)奏者のカルロス・ロハスだ。
南米大陸の最北部に位置するベネズエラからコロンビアにかけての内陸部、オリノコ川流域の平原地帯(ジャノ)には、ホローポと呼ばれる独特の音楽がある。スペイン/先住民/アフリカの影響を受け、4分の3拍子と8分の6拍子がからみあう複雑なリズムを持つ音楽で、基本的には、クアトロ(4弦ギター)、アルパ、マラカス、バンドーラ(リュートから派生した洋ナシ型の弦楽器)などにより演唱される。
シマロンは、リーダーのロハスとボーカルのアナ・ベイドを中心に2000年に結成。「ホローポをいかに世界の人々に届けるか」をコンセプトに、コロンビア国内はじめ世界30か国で公演し、スミソニアン・インスティテュートによって発表されたアルバム『私は野生のカウボーイ』で2005年度グラミー賞にノミネート、2012年には『シマロン:コロンビア平原地方のホローポ音楽』がインディペンデント・ミュージック・アウォードで最優秀ラテン音楽アルバムを受賞している。今回来日したのは、このふたりの他、クアトロ、バンドーラ、ベース、パーカッション(2名)という計7名。一番若いメンバーは18歳になったばかりとのことで、固定した楽団というよりは、さまざまなメンバーを擁する音楽チームと呼んだほうが良いのかもしれない。全員が超絶技巧の素晴らしいテクニックの持ち主であり、ジャズやファンク、フュージョンなどに大きな影響を受けているようにも聴こえる。
「例えばオープニング曲はファンクに近いリズムに聞こえたかもしれないが、実はそれは、ホローポに内在するひとつの要素なんだ。ホローポを細かく分析していって表面上には見えない部分を表に出していくのが自分の仕事だと思っているが、その作業の中で、この伝統音楽の中に入っている要素が、違う楽器で演奏することで新しく聞こえたり、他のジャンルと通ずるように聞こえたりする。それはとても面白いと思うね。マラカスにしても、非常に重要な楽器ではあるが大きなステージで演奏するときはどうしても存在感が小さくなってしまうので、シマロンでは、マラカスのパートを他のパーカッションで代用して大きな音で演奏している。『オリノコ』は、ジャノ音楽の伝統にもとづきながらも、われわれが最大限の表現力で形にした力強いアルバムになっている。ぜひ楽しんでいただきたい」