世界を駆けるアコーディオニストcoba 四半世紀のベスト盤は現在進行形
「最近、僕は世の中はすべて“粒”だとおもっている。僕らも〈粒〉。意識の粒がたまたま音楽になり、みなさんのつぶつぶの意識に届き。影響を与え合い、作用し拡散していく」(coba)
デビューから四半世紀、トップアコーディオニストとして走り続けて来たcoba。最新ベストアルバム『mania coba 4』には粒揃いの名曲が並ぶ。次々と三十数枚ものアルバムを発表し続けて、今回は「ある視点で選曲した」コンピレーション・アルバムになった。過去のものだけではなく、新曲に未発表曲、新たなる試みにも挑戦した。
リード曲《9000 nights ~九千の夜~》は、ギタリスト沖仁との共演が旬だ。白羽の矢を立てた理由は「なんか似てる」から。二人のマエストロの共通性とは……。フラメンコ業界から世界へ飛び出した沖仁。小林靖宏は、アコーディオン業界から飛び出して世界のcobaに。”9000nights”は25年の月日を意味する。
デビュー当時の音源《SARA》に、2017年のcobaが演奏する「夢のコラボ」も実現させた。小林青年時代の演奏を、現在のcobaのスキルを総動員してフォローする。「ただし、あの当時のロマンチシズムや、夢を持ったハングリーな演奏は曲げずにね」。親子のような二人のcobaの邂逅は新鮮だ。
《SARA》は、ルチアーノ・ファンチェルリ音楽院在学中に4年間下宿した若夫妻の家に誕生した娘の名前に由来する。cobaの帰国後生まれたベイビーのお祝いに「いとしい」気持ちを込めてつくったこの曲は幸運をもたらした。ファーストアルバム『シチリアの月の下』に収録され、日本レコード大賞特別賞を受賞した。月日を経て、赤ちゃんサラはお嫁さんに。イタリアの結婚式に駆けつけ祝福の演奏をした。
9月、ヴェネチアの世界コンクールの恩人 ルチアーノ・ファンチェルリ音楽院の師匠のエリオ・ボスケッロ氏が天に召された。晩年は、cobaが入門した日の光景を繰り返し語り、彼の活躍を誇りにしていたという。
10月には、マルケ州カステルフィダルド市の名誉市民の授賞式と演奏会でイタリアへ。アコーディオンの詩人といわれるジェルヴァジオ・マルコシニョーリ、リシャール・ガリアーノに次いで三人目の受賞だ。
収録曲《魂萌え》では、ヤドランカの歌声に再会できることも感慨深い。阪本順二監督映画『魂萌え』(2007年)のエンディングを飾る名曲。サラエヴォ生まれのヤドランカの歌声が、ブルガリアンヴォイスのポリフォニーと呼応し、cobaのアコーディオンと融合し響きあう。愛あふれるcobaの新しいベスト盤。音楽の粒と粒はつながりあい、宇宙を循環し光をふりそそぐ。
LIVE INFORMATION
霧島酒造 presents coba tour 2017 25周年記念ファイナル イタリア名誉市民賞受賞凱旋コンサート
○11/4(土)18:00開演
会場:日本橋三井ホール
出演:coba(acc)有田純弘(gt)バカボン鈴木(bs)天倉正敬(ds)十亀正司(cl)篠塚友里江(cl)柿沼麻美(fg)伊藤優里(fl)
友情出演:大久保ノブオ/タマ伸也(ポカスカジャン)