西も東も超える自由な“Hichiriki” その響きとゆらぎに憩う
『Hichiriki Café』には国境はない。スタンダードなジャズにポップス、オリジナル曲etc…。いにしえから伝わる雅楽器を、ジャンルを超えた自由な音楽に昇華させた東儀秀樹。木管楽器の祖といわれる〈篳篥=Hichiriki〉の響きにはまことに繊細な「ゆらぎ」がある。
「ジャズのアドリブを吹こうと、ポップやロックのビートにのって吹こうと、古典で大切にしている表現がどこかで必ず出る」。それは計算されたものではなく、古典を大事にしてきたからこその「ゆらぎ」という。
すべての楽器の編成を感じながら頭の中で曲が完成する。分身の術さながらのプロフェッショナルの技。ピアノもベースもギターもすべて自分でこなす。自宅でコツコツ録音するのが、精神衛生にいい。かけひきがなく、やりたいことだけができるという。
今回のアルバム収録曲は、“もともと好きな曲”+α。東儀秀樹オリジナル3曲《Little Bicycle》《Go!Go!Go!》《君の夢を守りたい》は愛情あふれる楽曲だ。共演ツアーも多いアコーディオニストのcobaの提供曲は《Flying high》でワイルドに。RADWIMPSの曲《なんでもないや》は、映画『君の名は』を観て、「篳篥で演奏するのにすごく合うと感じて決めた」。篳篥がJポップ系ロックに軽やかに響き新鮮だ。
若い世代に雅楽を教えることも多く、小中学校での雅楽演奏講座にも赴く。
「篳篥や笙は、とってもやっかいな楽器なので、教えるのはむずかしいけれど、僕は、指導が好き。相手ひとりひとりの個性を生かして教えることができると自負してます。僕が教えなくて誰が教えるんだ!?」 熱血雅楽先生である。
「地域や国による個性はとても大切なものです。東洋的、西洋的などの違いを重んじることはそれぞれの個性を大事にすることになります。ただ2000年くらい前だとまだ今ほど西と東の文化の分け隔てがなく、その時代に生まれた楽器というのは“西洋的”“東洋的”という概念を超越しているのではないかと思います。だからその楽器の個性を生かせれば、西も東も超えたところ、もっと言えばすべての生命体にまで響かせることができる、それが雅楽の力なのではないかと思っています。国や人種のボーダーラインは個性の尊重のためにはしっかりあるべきだと思っていますが、そのボーダーラインを簡単に行き来することに醍醐味があるのです」
収録曲ラストの《What A Wonderful World》を聴き、シルクロードの情景を浮かべ、雅楽のゆらぎ感に浸る。時空を超える自由な世界のカフェを夢想しながら。
LIVE INFORMATION
東儀秀樹×古澤巌×coba 全国ツアー2017
「TFCC55 LEVEL IV」
○9/3(日) 栃木県総合文化センター メインホール(栃木)
○9/7(木) 札幌コンサートホール Kitara 大ホール(北海道)
○9/10(日) NHK大阪ホール(大阪)
○9/13(水) 愛知県芸術劇場 大ホール(愛知)
○9/16(土) 相模女子大学グリーンホール(神奈川)
○9/18(月・祝) 白河文化交流館コミネス 大ホール(福島)
○9/20(水) 福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい 大ホール(福井)
○9/23(土) Bunkamura オーチャードホール(東京) ほか