本書はジャズがニューオーリンズで発祥、シカゴ、ニューヨークと北上し、その発展した過程はもちろん、多くの偉人たちの功績と歴史を伝える〈歴史本〉には違いない。だが、50年代プレスリーが登場した時代、黒人解放運動が盛んな時代、ビートルズが世界を席巻し始めた時代、ヒップホップが浸透し始めた時代などなど、その時々の中で、ジャズはどのような音楽として見られ、聴かれていたのか。そういえばマイルス・デイヴィスはビートルズのカヴァーをやってなかったよな、ということにあらためて気づかされたり。知っているようで知らない角度からのジャズ史を見つめる稀有な一冊。