「現代ジャズのレッスン 1959年から考える」などの著作で知られるジャズ評論家村井康司の最新作。この本は実に珍しい内容で、ジャズについて書かれた言葉を論じることを通してジャズを語るといったものになっている。評論の対象は村上春樹、ボリス・ヴィアン、スコット・フィッツジェラルド、といった小説家、中山康樹、相倉久人、油井正一といったジャズ評論家、さらには菊地成孔、山下洋輔といったミュージシャンなどであり、多彩なジャンルの人物をまな板の上にのせて存分に料理をしている。それにしてもジャズという音楽について語る人の熱量とそれを浮き彫りにした著者の力量に圧倒される。