新星FAITHの登場から振り返る、2017年の日本のパンク・シーンの動向

 長野県は伊那市発の5人組、FAITHの初の全国流通盤であるミニ・アルバム『2×3 BORDER』は、2017年の要注目盤のひとつと言っていい。〈未確認フェスティバル 2017〉のファイナリストで、メンバー全員が現役の高校生というトピックもさることながら、全編が英語詞による楽曲のクォリティーの高さに正直驚いた。

FAITH 2×3 BORDER ATSUGUA(2017)

 今年はHi-STANDARDの約18年ぶりとなるニュー・アルバム『THE GIFT』がオリコン・チャートで初登場1位を獲得。加えて、HAWAIIAN6、ASPARAGUS、HOT SQUALL、OVER ARM THROWと、日本のパンク・シーンにおける強力な新作のリリースが同時期に重なり、メロディック勢の奮闘ぶりが目立つ年と言える。しかし、ヴェテランや中堅が存在感を発揮する一方で、若手や新人バンドがその流れに追随しなければシーンは活性化しない。ハイスタや活動休止中のELLEGARDENなど、ジャンルを飛び越えて多くのリスナーを鷲掴む、新たな可能性を秘めたアクトの登場が期待されるが、FAITHはそこに連なるニューフェイスと捉えていいだろう。

 彼らは2015年に別々の高校に通うメンバーが集まって結成。ドリチュラーあかり(ヴォーカル)、コバヤシレイ(ギター/ヴォーカル)、ヤジマレイ(ギター/ヴォーカル)、荒井藤子(ベース)、メランソンルカ(ドラムス)から成る男女混合バンドで、5人中3人が日米のハーフというユニークな編成だ。ポップ・パンクを通過した多彩なロック・サウンドを鳴らす5人は、平均年齢17歳という若さ溢れる清冽な音色と成熟した演奏が大きな魅力。同じ女性ヴォーカリストを擁するという点で想起するのは、シンプル・プランやフォール・アウト・ボーイらが築いたポップ・パンク・シーンの活況のなかで2000年代に登場したパラモア。立ち位置としては、パンクの領域に収まらないポップネスを解き放つ04 Limited Sazabysと近いかもしれない。とりわけ、アヴリル・ラヴィーンなどを彷彿とさせるフロントウーマン、ドリチュラーあかりの美メロを丹念に歌い上げる軽やかで透明感を帯びた歌声は、聴き手を強く惹き付けるものがある。

 MVも公開されている『2×3 BORDER』の冒頭曲“Take me away from here”は、躍動感漲るパンキッシュな演奏と伸びやかなヴォーカルが絶妙にマッチ。続く“Bana Pla”もライヴ映えしそうな曲調で、この2曲からしてポテンシャルの高さが窺い知れる。そこから“distance”“DON'T FALL”といったミッドテンポのナンバーではフュージョンやブルースを思わせる滋味豊かな要素を織り込み、ティーネイジャーらしからぬ懐の深いアレンジで聴かせる。また、夏の思い出を綴った“Summer”は昂揚感を煽るハンドクラップと哀愁漂うメロディーが絡まり、脳裏に詞の情景が浮かんでくるよう。パンク/ロック好きのみならず、ポップ・ミュージックの愛好者を振り向かせるであろう、天然色のキラメキに満ちたFAITHの音楽。今作をきっかけに、その知名度がグッと上がることは間違いない。

 

関連盤を紹介。

 

*12月10日の伊那GRAMHOUSEをはじめ、ライヴ・スケジュールも続々と更新中! 詳細はオフィシャル・ツイッター〈@FAITH_ina_〉にて!