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曲の世界に心底入って

――あと、〈I〉ではKUWATA BAND、〈II〉では桑田佳祐ときて、いよいよ今回は本丸のサザンをカヴァーしましたね。

「しかも、よりによって“いとしのエリー”っていうね(笑)」

――ファンクラブにも入ってたぐらいサザン好きなだけに、プレッシャーはハンパなかったんじゃないですか?

「そうですね。こんな曲をカヴァーしていいのか?っていう意味で、“いとしのエリー”は1回ライヴでやってたんですけど、最後の最後まですごく悩んで。でも、自分の人生を振り返ったときに、自覚してサザンにハマったのはあきらかに『ふぞろいの林檎たち』っていうTVドラマで。小学校4、5年生でしたけど、主題歌の“いとしのエリー”や劇中のいろんなサザンの曲を聴いて、ファンクラブに入って、最終的に桑田さんの家の前で立ってるストーカーになるという(笑)……そんな人生を歩むことになった入り口の曲なわけだから、もう自分のために歌おうと思って」

平井堅 『Ken’s Bar III』 ARIOLA JAPAN(2014)

――レコーディング本番はどうでした?

「やるとなったらもうね。今回は奇しくも大御所さんの曲がいっぱいありますけど、その人たちの顔を思い浮かべたら歌えない曲ばかりで。だから、あんまりそういうことは考えず、その曲の世界に心底入って、自分としては気持ち良く歌えました。フリー・ソウルというのか、メロウ・ソウルというのか、自分なりのそういう解釈で歌えた気がしています」

――実際、曲が進むにつれて、どんどん自分を解放して歌ってる感じが伝わってきました。

「でも、まったく記憶にないんですけど、泥酔して今回のジャケット撮影で行ったNYから桑田さんに留守電を入れていたらしくて(笑)。翌日、桑田さんから〈何しゃべってるか全然聞き取れなかったけど大丈夫?〉って返信が来て、〈どうもすいません。申し訳ないです〉って。いまだに何で電話したかもわからない(笑)。よっぽど気になってたんでしょうね(笑)」

――上手く歌えたという充実感とか昂揚感があったんじゃないですか?

「いや、たぶん謝ってたんじゃないですかね(笑)」