今宵もすっかり酔わされて──〈妄想〉をチェイサーに『Ken’s Bar III』を嗜む……

平井堅 “even if”

平井堅 『gaining through losing』 DefSTAR(2001)

店の重たい扉を開けば、いつものあの曲が聴こえる。1杯目を何にするか考えつつ、小粋なピアノに耳を傾けると……弾いてるのは、いまやNYでジャズマンとして活躍する大江千里! 今宵は〈REAL〉な〈ロマンス〉が期待できそうだ。

 

福山雅治 “家族になろうよ”

福山雅治 『HUMAN』 ユニバーサル(2014)

まずは、辛口でキレ味のある〈スーパードライ〉で乾いたノドを潤す。BGMはピアノ・アレンジで、さらにロマンティックに生まれ変わった福山雅治のヒット曲。〈家族になろうよ〉と声に出してみたが、隣の席には誰もいなかった……。

 

長渕剛 “順子”

長渕剛 『逆流』 ユニバーサル(1979)

続いて日本酒ベースの〈サムライロック〉をオーダー……したつもりが、なんかやけに甘い。そういや“順子”の頃の長渕は、女々しい男心を歌ってくれてたな、と、かき鳴らさない系のアコギと優しい歌声を聴きつつ独りごちる。

 

BOZ SCAGGS “We’re All Alone”

BOZ SCAGGS 『Silk Degrees』 Columbia(1976)

店の音楽はボズ・スキャッグスの代表曲に。なんでもマスターがその昔、オールディーズ・クラブのバイトで歌ってた頃のレパートリーだったそう。ピアノと歌だけのシンプルなアレンジは、〈ジンリッキー〉のように素材の良さで酔わせる。

 

サザンオールスターズ “いとしのエリー”

サザンオールスターズ 『10ナンバーズ・からっと』 ビクター(1979)

このバーではお馴染みとなっていう桑田メロディー。今回はついに、日本が誇るスタンダードをカヴァー。ジャズ・ギターと共にしっとり聴かせる歌唱は、レイやクレイにも迫るクォリティー。ここはやはり、サントリーホワイトのロックで。

 

JANIS IAN “Love Is Blind”

JANIS IAN 『Aftertones』 Columbia(1976)

ジャニス・イアンの名曲を、亀田誠治のベースだけをバックに歌い上げる──。ドライでビター、それでいて甘酸っぱさも残る味わいは、ジン・ベースにブランデーやオレンジ・キュラソーから作る〈ジン・ブラインド〉のよう。

 

JAMIROQUAI “Virtual Insanity”

JAMIROQUAI 『Travelling Without Moving』 Work(1996)

ウッドベースとローズピアノの音色が印象的なジャズ・コンボによるアレンジはURUによるもので、ジャミロクワイの代表曲がスモーキーに香り立つ。ジンとスコッチだけで作る〈スモーキーマティーニ〉のコク深い味わいがよく似合う。

 

財津和夫 “切手のないおくりもの”

財津和夫 『財津和夫ワークス~40周年を記念して~』 ビクター(2012)

大橋トリオのプロデュースで、BLACK BOTTOM BRASS BANDや武嶋聡ら腕利きのホーン隊が参加し、ゴキゲンなセカンドライン・ファンクに生まれ変わった、財津ナンバー。ここはもちろん、ニューオーリンズ生まれのカクテル〈ハリケーン〉を。

 

ブラックビスケッツ “タイミング”

ブラックビスケッツ 『LIFE』 ARIOLA JAPAN(1999)

押尾コータローのスパニッシュ・ギターに乗せて歌うは、なんと〈ブラビ〉のヒット曲。これが意外なハマり具合。あの頃のビビアン・スー可愛かったなあ……なんて思い出しつつ、〈スカーレット・オハラ〉を一杯(それはスーじゃなくてリー!)。

 

かまやつひろし “やつらの足音のバラード”

かまやつひろし『ゴールデン☆ベスト〈決定版〉』 ユニバーサル(2013)

TVアニメ「はじめ人間ギャートルズ」のエンディング曲を、ストリングスのみのアレンジでカヴァー。地平線に沈む夕陽や恐竜の鳴き声も弦のみで表現。ウォッカ・ベースの〈ジー・ストリング〉を味わっているうちに、そろそろ終電の足音も聞こえてきた……。

 

ROBERTA FLACK “Killing Me Softly With His Song”

ROBERTA FLACK 『Killing Me Softly』 Atlantic(1973)

終電間際、素敵な女性が店のドアを開けて入ってきた。そしてなんと、あのロバータ・フラックとマスターが〈やさしく歌って〉を共演。こんな素敵なデュエットが聴けるなんて。もう、このまま死んでもいい……マスター、バーボンもう一杯!

 

FRANK SINATRA “My Way”

FRANK SINATRA 『My Way』 Reprise(1969)

〈お客さん、そろそろ終電だよ〉──肩を揺すられ目が覚めると、美しいピアノと透明感のある歌声が、ミネラルウォーターのように身体に染み渡る。“My Way”を聴きながら、ふと佇み、私は振り返る──今夜は完全に飲みすぎた……。