ピアノ弾き語りの前作を経て、豪華なコラボ盤がお目見え。カヴァーのレパートリーとして長らく重要だった大貫妙子の“横顔”をついに本人とデュエット! 旧知の奥田民生や前川清、細美武士、YUKIらと新曲を披露し、上妻宏光の三味線と丁々発止のセッションを繰り広げる。どの曲も意外性と即興性があって極めてスリリングだが、U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESSとの手合わせはユーモラスで良い湯加減だ。

 


〈人の歌 矢野が歌えば 矢野の歌〉という名言がある通り、矢野顕子の手にかかれば誰の歌だって彼女のものになってしまう。では、〈人と歌えば〉どうなるだろう。今作にはそんな誰かと歌った楽曲が11曲。矢野のセルフカバーもあれば、一緒に歌う相手のカバーも、全く別のアーティストのカバーも、新曲もある。特筆すべきは、イエモンの名曲を吉井和哉と共に大胆に〈矢野の歌〉にした“パール”。松崎ナオの楽曲を矢野と一緒に鹿の一族で生まれ変わらせた、意外な相性の良さを示した“大人はE”も素晴らしい。そして森山良子と矢野のユニット、やもりの小曲をこちらも大胆にアレンジし、ラップの掛け合いに矢野も登場するU-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESSとの“ただいまの歌 ~ふたりぼっちで行こうver.~”も最高だ。結局、矢野が歌えば矢野の歌になってしまうのだが、それってジャンルを問わず相手への深い愛があるがゆえなんだな、と改めて再認識させられる。