© 尾形正茂

まだまだ知られていないダマーズのピアノ曲を中心に

 ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928~2013)の作品は日本ではまだ一部にしか知られていないだろう。主にフルートとハープのための作品、サクソフォン四重奏曲などが中心で、ダマーズのピアノ曲についてはほとんど知られていないというのが現状だと思う。そんな中、ダマーズの後期のピアノ曲を中心に録音をしたのが、若手ピアニストの山田磨依である。

 「ダマーズの作品との出会いは、実は父親が関わっていまして、アマチュアでフルートを吹いていた父からダマーズのフルート・ソナタを一緒にやろうと言われて、練習し始めたのが最初の出会いでした。その後しばらくはダマーズの作品は演奏していなかったんですが、高校時代に再び出会いまして、それから本格的にダマーズのピアノ曲に取り組むようになりました」

 と山田は語る。そして、桐朋学園大学卒業後はフランスに渡り、パリ地方音楽院でフランス音楽に触れる日々を過ごした。

 「2015年までパリで学んでいたのですが、まだダマーズが生きていた時代に重なっていて、ダマーズが住んで居た場所の近くまで行って、その空気を吸ったりしながら、彼の音楽を取り巻く雰囲気をつかもうとしたりしていました。残念なことに、ダマーズには直接会う事が出来なかったのですが」

山田磨依 Mai Yamada ダマーズ生誕90年によせて Sonare Records(2017)

 今回の山田のデビュー・アルバムにはダマーズの《ソナチネ》《出現》《夜明け》《序奏とアレグロ》といった作品が収録されている。

 「どの作品も比較的最近のもので、とても聴きやすいと思います。初期には現代音楽的な、不協和音のある重い音楽も書いていたダマーズですが、後期に行けば行くほど、透明な美しさを持っている、同時に現代性もある作品を書くようになって行きました。それが分かって頂けるような選曲になっています」

 あえて言えば、ドビュッシーのピアノ曲をよりモダンにしたような作品群と言ってもよいかもしれない。

 「ダマーズの母親はハーピストだったので、ハープ的なアルベジオを取り入れた作品もあります。そういう点でもフランス的な世界を感じますし、とても繊細な感覚に溢れたピアノ曲は、きっと多くの人に受け入れられると思います」

 この他にも、フランスで学んだ山田らしく、ドビュッシーの《喜びの島》、デュカスの《ラモーの主題による変奏曲・間奏曲・フィナーレ》(滅多に聴かないけれどなかなかの名曲)、そして山田のために書かれたハーツェルの《蒲公英(タンポポ)》が収録されている(ハーツェルはイギリス人の作曲家)。これまでにない選曲のアルバムに一度耳を傾けてみてほしい。

 


LIVE INFORMATION

南麻布ランチタイムコンサート 山田磨依
○6月7日(木) 12:30開演
会場:南麻布セントレホール

東日本大震災チャリティロビーコンサート 山田磨依
○8月20日(月) 開演時間:①18:00/②19:00(各回30分)
会場:白寿本社ビル1階ロビー

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