ECM自ら新マスタリングした世界初、SA-CD化音源第4弾!
キース・ジャレット・トリオは1983年1月にニューヨークのスタジオで、アルバム3枚分を録音。うち2枚はタイトルが示すようにスタンダード曲集だった点で、それまでにキースが築いていたキャリアの一大転換となる画期的な作品だった。3部作の第2弾として84年にリリースされた『チェンジズ』は、2枚の名曲集を録音した後、キースがもっと他にやってみたいと感じたことで生まれた作品。《フライング パート1》は緊迫感を増しながら次第に楽曲が形作られる3人の合奏を中心に、ピアノとベースのインタープレイやドラム独奏も出てきて、冒頭と同じくスローなソロ・ピアノで終わる16分3秒。14分45秒の《フライング パート2》はリズミカルな進行で、キースもノリノリ。ドラムとベースにもスポットが当たり、終盤はトリオの前衛性も浮き彫りになる。これら2つの即興曲は後年色濃くなる、名曲だけにとどまらないトリオの音楽性を結成時に記録していた証しであり、改めて聴き返しても刺激的だ。《プリズム》は85年の初来日公演でも披露したバラードで、『スタンダーズVol.2』の《ソー・テンダー》と並ぶトリオ初期のキース曲であることが見逃せない。
『星影のステラ』はトリオの第4弾にして、86年発表の初のライヴ。新譜で聴いた当時、緊張感と開放感、創造性の三拍子がスタジオ作と同じクオリティで発揮されていることに驚いた。トリオの魅力がピアノ・イントロにもあることを冒頭の3分20秒が教えてくれるタイトル曲、キースのエクスタシーがリスナーの快感を喚起する《恋に恋して》、音符をずらしたピアノのテーマ演奏から早くも秀逸過ぎる《今宵の君は》と、耳馴染みの楽曲が新鮮極まりない。アレック・ワイルダーの《ザ・ロング・ブルース》やナット・アダレイ作《オールド・カントリー》の隠れ名曲を教えてくれたのも感謝。《トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ》の“7分28秒に現れる奇跡”を体感してほしい。音質に関してはSHM-CDと比較試聴したところ、スタジオ録音の『チェンジズ』で顕著な違いが認められ、レコーディング・スタジオに立ち会っているかのような臨場感が味わえた。