レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの衝撃、ふたたび――。まだ実際にライヴも体験していないから、いまの時点でこんな表現をしてしまうのは早いかもしれない。だがしかし、ステージ映像メインの“Walking In My Shoes”、トラヴィス・バーカー(ブリンク182)参加の全編ライヴ映像による“Hunting Season”、そしてスタジオ・ライヴならぬ、撮影セットでの超絶パフォーマンスが繰り広げられる“We’re Coming In”、これら既発のMV3本を観ただけで、レイジと出会ってしまった時の、あの全身の血がグラグラと沸騰するような感覚を思い出したロック・ファンは少なくないはず。しかも、今年の〈フジロック〉に出演というトピック付きだ。これは目撃しないわけにはいくまい。たとえ苗場が土砂降りになろうとも、僕は絶対に観るぞ。

 彼らの名はフィーヴァー333。配信限定でリリースされていたEPにボーナス・トラックを加えた初のCD作品『Made An America』で、7月に本邦デビューする3人組だ。元レットリヴのジェイソン・アーロン・バットラーを中心に、元チャリオットのスティーヴン・ハリソン、ナイト・ヴァーシスのアリック・インプロタというキャリア豊富なメンバーによる実力派グループとして、昨年にLAで結成されている。全身タトゥー(アリック以外)のアーティスト写真を見て、僕は〈トラヴィス・バーカーかよ!〉と突っ込みたくなったのだが、そのトラヴィスとジョン・フェルドマンがプロデュースを担当。なるほど、ゼロ年代以降のUSパンク/ポスト・ハードコア/スクリーモ人脈というわけか。

THE FEVER 333 『Made An America』 Roadrunner/ワーナー(2018)

 Kerrang!誌の表紙をジャックなど、すでにラウド系メディアの熱い注目を集めているフィーヴァー333だが、それも納得というもの。とにかく音もヴォーカルもブッ飛んでいるのだから。加えて、演奏はギターとドラムスだけという恐るべき事実。UKからはベースとドラムスのみで超絶ロックンロールを鳴らすロイヤル・ブラッドという素晴らしい新世代バンドが登場しているが、〈ロイヤル・ブラッドに対するUSからの回答〉などと言ってみたくなったりもする。

 ザクザクと突き刺さすようなラップと狂気のスクリームに一発ノックアウトされること確実なタイトル・トラックで、『Made An America』は幕開けする。そこからは驚愕と興奮、そして戦慄、その連続だ。尋常じゃないテンションで完膚なきまでにラップを叩き付ける“We’re Coming In”、イェラウルフが援護射撃してより凶暴さを増す“(The First Stone) Change”、もはやビートと咆哮の乱れ打ち状態な“Hunting Season”、突如現れる麗しいメロディーに呆気に取られつつ酔わされる“Soul’d Me Out”、今度はシンガロング必至の美メロで魅了する“Walking In My Shoes”、ミニマルなラップ・チューンにして凄まじい熱量の“POV”……と、息もつかせぬ波状攻撃。聴き終わって雄叫びを上げるか、あるいは一気に脱力して放心状態になるか、はたまたハイになって大笑いしちゃうかは、受け手のあなた次第だ。

 〈コミュニティー、チャリティー、そしてチェンジ〉をバンドのステイトメントとして掲げ、〈アートというのは偶発的だ。俺らは歌を通じて気持ちを訴えるだけでなく、実際に行動を起こしていまの世界を変えたいんだ。俺らが作ろうとしている音楽は、これから起こる新たな革命のサウンドトラックだよ〉といったコメントも発表している彼ら。そのロック表現の核心に迫るためには、歌詞も入念にチェックすべきだろう。そして準備万端で苗場入り、といきたいところだ。

 


フィーヴァー333
元レットリヴのジェイソン・アーロン・バットラー(ヴォーカル)の呼びかけのもと、元チャリオットのスティーヴン・ハリソン(ギター)、ナイト・ヴァーシスのアリック・インプロタ(ドラムス)が集ったLAのパンク/ラップコア・バンド。2017年7月に活動を開始し、翌月にファースト・シングル“We’re Coming In”を公開する。結成当初からトラヴィス・バーカーのサポートを受け、トラヴィス主催の〈Musink〉など大型フェスにも多数参加。2018年3月にファーストEP『Made An America』(Roadrunner/ワーナー)を配信し、Kerrang!の表紙を飾って話題を集める。〈フジロック〉出演に合わせ、7月18日にボーナス・トラックを加えた同EPの日本盤がリリースされる。