20年代式のエクストリーム・ロックを轟かせるデュオの恐るべき激情と爆音……圧倒的な熱と恐るべき密度で迫る待望のファースト・アルバムがついに登場!

熱気と轟音

 ミルキー・ウェイ(ヴォーカル/ベース)にサム・マトロック(ヴォーカル/ギター)という、パンキッシュなヴィジュアルも、そういった視覚効果をサウンドで立体化したような音楽性も実にキャッチーな、新進気鋭のエレクトロニック・ロック・デュオがウォーガズムだ。初音源の“Post Modern Rhapsody”を2019年に配信して始動し、ラウド&ヘヴィー系のメディアでは早くから熱視線を浴びつつ、昨年のEP『Explicit: The Mixxxtape』(同作はタワレコ限定で日本盤もリリースされた)が出るあたりからは日本でも話題を拡大。今年2月に開催されたcoldrain主催のフェス〈BLARE FEST.〉で初来日を果たし、その評判を受けて決定した初の単独来日公演も2024年1月に控えている。そんな絶妙すぎるタイミングで、二人にとって初のフル・アルバム『Venom』が登場した。

WARGASM 『Venom』 Slowplay/Republic/ユニバーサル(2023)

 そもそも両者が初めて出会ったのは、サム・マトロックがデッド!というバンドで活動していた頃で、ミルキー・ウェイはそのライヴ写真を撮影するカメラマンだった。そこで交友が生まれた後、2018年にアルバム『Golden Age Of Not Even Trying』を残してデッド!が解散すると、サムは東京でモデルをしていたというミルキーに新プロジェクトの結成を持ちかけたという。

 ウォーガズムというユニット名の由来は、女性のみのオルタナ・バンドとしてグランジ期に飛躍したL7の曲名から。楽曲のスタイルがそこに寄っていたわけではなく、当初はポップ・パンク系の楽曲を多く書いていたそうだが、二人が好みの音楽として挙げる名前はスリップノットやデフトーンズ、リンキン・パーク、リンプ・ビズキット、シェイプス、ポピー、N.E.R.D、プロディジーなどにも及ぶ。そこから熱気と轟音を取り出して自分たちのものにしていく過程で、インダストリアルやニューメタルにレイヴのフィーリングを絡めたウォーガズム独自のミクスチャーなサウンド・カラーが出来上がっていったのだろう。先述の“Post Modern Rhapsody”をリリースした翌週に初めてのライヴ・パフォーマンスを行っている。