本格的なフィーヴァーが始まる! 一撃必殺のラップコアで各地のフェスを荒らしに荒らし、グラミー賞にもノミネートされたド級の新人3人組が堂々のアルバム・デビューだ! ここからフルスロットルで加速するぜ!!

 

地鳴りのような歓声に包まれて

 とにもかくにも、パンツ、パンツ、またパンツ。揃いも揃ってパンツ一丁なのである。昨夏の〈フジロック〉での本邦初ライヴを前に、〈準備万端で苗場入り、といきたいところだ〉と本誌に書かせていただいたLA発の新星3人組、フィーヴァー333。実際に準備万端で苗場の〈WHITE STAGE〉で待ち受けていたところ、そこでバンドが挨拶代わりとばかりに披露したのは、鮮烈なパンイチ姿でのパフォーマンスだった。しかも、2曲目で早くもフロアへ突っ込んでいったジェイソン・アーロン・バットラー(ヴォーカル)は、パンイチになるや雨でびしょ濡れのステージ上でスライディングや宙返りを連発し、さらにはスティーヴン・ハリソン(ギター)と共に、機材車か中継車と思われるトラックの屋根でプレイするという、前代未聞のライヴを繰り広げたのだ。

 おっと、ここで誓って言っておきたいのは、フィーヴァー333が決してイロモノやキワモノ集団などではないということ。パンイチ・トリオ(ドラマーのアリック・インプロタだけ、なぜかパンツの上からベルトを巻いていたが……)に当初こそ大爆笑だった観客が、豊富なキャリアを持つ3人──ジェイソンはレットリヴ、スティーヴンはチャリオットの元メンバーで、アリックは現在もナイト・ヴァーシスの一員──のハイスキルな演奏&ヴォーカルと、なりふり構わず必死でオーディエンスと繋がろうとする姿を目の当たりにして、曲を追うごとにどよめき、熱く沸き上がり、そしてツートップがトラックの屋根によじ登った頃には、会場中が地鳴りのような大歓声に包まれていた……という事実が、そのことを何よりも物語っているだろう。個人的には、終盤にジェイソンが自分たちのクルーと、遠慮して前に出たがらない主催者側の日本人スタッフを全員ステージに上げ、「みんな俺たちの仲間なんだ。盛大な拍手を頼むよ」と紹介した場面で、思わずグッときてしまった。

 彼らが本誌に初めて登場したのは昨年の7月号。驚愕ものの爆発力を誇るEP『Made An America』を携え、日本デビューを果たすタイミングだった。ドーナッツ・ショップやカフェを含む、本国US及びカナダのヴェニューを精力的に回っていた3人は、そこから各国のフェスに参戦。〈フジロック〉での初来日後すぐにUKへ飛び、またUSへ戻り、11月からはヨーロッパをツアー。そのまま今年2月まで続くブリング・ミー・ザ・ホライズンとの大規模なヨーロッパ&北米ツアーに突入と、筋金入りのライヴ・バンドぶりを裏付けるロードを続行中だ。ツアー後の3月には再来日が決定しており、今度は嬉しい単独公演が行われる。

 この間に大きなトピックがあった。EPのオープニングを飾っている“Made An America”が、第61回グラミー賞の最優秀ロック・パフォーマンス部門にノミネートされたのだ。ひと足早く単独で来日した同じくUSロック界のホープであるグレタ・ヴァン・フリートをはじめ、強敵揃いだが、期待して結果を待つとしよう。

 

とんでもない破壊力

 そして驚くべきは、ツアーに次ぐツアーと並行して、彼らが着々と曲作りを進めていたこと。あるいは、曲のストックは現状いくらでもあって、ツアーの合間にサクッとレコーディングしていたのかもしれないが、何はともあれ昨年の終わり頃から報じられていた通り、待望のファースト・フル・アルバム『Strength In Numb333rs』がこのたび到着した。

FEVER 333 Strength In Numb333rs Roadrunner/ワーナー(2019)

 〈フジロック〉出演時の冒頭に流れていたのと同様の、ノイズやアナウンスのコラージュから成る“...”で本作は幕を開ける。苗場のステージではこの曲をバックに黒頭巾を被ったジェイソンが黙して立つという、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを彷彿とさせるパフォーマンスの後、頭巾を脱ぎ捨てたのを合図にメンバーが加わり、一変して狂乱の1曲目に雪崩れ込んだのだが、アルバムもまったく同じ流れで“Burn It”が投下される。あまりハードルを上げるようなことは書きたくないが、とんでもない破壊力を持ったオープナーだ。まさに一撃必殺。誰もがいきなり度肝をブチ抜かれるに違いない。

 この曲を筆頭に、“Animal”“Prey For Me/3”“One Of Us”“The Innocent”“Coup D'etalk”など、美メロ+激烈ラップで心を鷲掴みにするキラー・チューンが『Strength In Numb333rs』の軸を成していて、EPの爆発力はまぐれでもなければ、見かけ倒しでもなかったことが明々白々となる一方、バンドの表現レンジの広さを知らしめるナンバーもここに加わり、フル・アルバムとしての醍醐味が存分に味わえる。メロディアスなフロウとメロウな歌声を聴かせる“Inglewood/3”然り、ラップとシャウトとストリームが雨アラレ状態で突き刺さる7分超えの“Out Of Control/3”然り、ストリングスを配して狂おしいほどの叙情を掻き立てる“Am I Here?”然り。

 サウンド面だけではない。フィーヴァー333の魅力を語るうえで、歌詞も決して外すわけにはいかないだろう。政治や体制というものに舌鋒鋭く斬り込んでいく姿勢は、現ロック・シーンにあって稀少で貴重だし、ジェイソンの鬼気迫る歌とラップが、叫びが、ステージングが、どのような感情から生まれたか、どのような意味を持っているかということも、伝えてくれているように思う。〈クーデター〉をもじったタイトルも見事な本編ラストの“Coup D'etalk”が象徴的だ。もちろん、アルバムの楽しみ方は人それぞれ自由だが、歌詞をしっかりチェックすることで、バンドの本質により迫れることは間違いない。

 再来日公演はもう間もなく。これはもう、槍が降っても目撃していただきたい。〈ロックとは何ぞや?〉という問いに対する明確な答えを、きっとそこに見い出せるはずだから。