ジャスティン・ビーバーやエド・シーランに憧れてポップスターになりたいと思ったら、どうすればいい?――その答えはソーシャル・メディアを活用すること。そうやって生まれたのがこのたび〈サマソニ〉で初来日したばかりの5人組ボーイズ・バンド、ホワイ・ドント・ウィーだ。彼らは個々に動画投稿で注目を浴び、それぞれソロで活動してきた面々である。

 「当時は趣味っていうか、好きだから歌っていただけで、そこまで真剣に仕事として考えていたわけじゃないんだ。でも、このグループを結成してからは本気だよ。いろんなレッスンも積んだし、何より他のメンバーとの相性が抜群なんだ」(ジョナ・マレー:以下同)。

 メンバー同士は以前からSNSを通して交流があり、良きライヴァルとして互いに励まし合ってきた仲。TV番組「アメリカン・アイドル」で健闘したダニエル・シーヴィの活躍ぶりも、ジョナはもちろん知っていたようだ。

 「出身地はバラバラだけど、LAに集まった時に〈みんなで一緒に歌おうか?〉って話になったんだ。〈僕たち一緒に〉というグループ名はそこから来ているよ。誰かに作られたグループではなく自発的ってところが特徴で、そこが他のボーイズ・バンドとの違いかな」。

 ホワイ・ドント・ウィーの特徴をもうひとつ挙げておくと、現在の欧米ヒット・チャートで主流となっているR&B/ヒップホップ要素の強さだ。このたび完成したファースト・フル・アルバム『8 Letters』を聴けばそれがわかるだろう。

WHY DON’T WE 8 Letters Atlantic/ワーナー(2018)

 「ドレイクやケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパー、ミーゴスなどのヒップホップが大好きなんだ。アーバン・カルチャーからは大きな影響を受けているよ。そのテイストが自然とアルバム全体から醸し出されていると思う」。

 結成から約2年間でコンスタントにEPを発表してきた5人だが、初のフル・アルバムの制作に関しては、まったく違った経験だったという。

 「いまの音楽シーンではひっきりなしに新曲を発表して、ファンを惹きつけておくことが大切。だからこれまでのEPはあまり時間をかけずに制作し、すぐにリリースしてきた。でもこのファースト・アルバムでは自分たちのサウンドを見つけたくて、じっくり取り組んだよ。捨て曲なしだと思うんだ」。

 アルバムのなかでジョナがもっとも気に入っているのは表題曲だとか。ゼッドやビービー・レクサ仕事で知られるモンスターズ&ザ・ストレンジャーズが、曲作りとプロデュースで手腕を発揮した一曲である。

 「凄くリアルな歌詞だと思うんだよね。〈I Love You〉の8文字がなかなか言い出せないと歌っているよ。誰もが共感できるんじゃないかな?」。

 〈8文字〉というタイトルに掛けて全8曲とコンパクトな構成ながら、日本盤のボーナス・トラックにはエド・シーランが提供した“Trust Fund Baby”を収録。エドの“Shape Of You”を手掛けたスティーヴ・マックも、共作・共同プロデュースでクレジットされている。

 「エドとは去年の〈VMA〉授賞式で初めて会ったんだ。〈君たちのことを応援してるよ〉って言われてビックリしていたら、数週間後には彼から楽曲が届いてさらにビックリ! ずっと憧れていただけに、言葉で言い表せないくらい感激したよ」。

 お騒がせYouTuberのローガン・ポールからもラヴコールを受け、彼の動画に出演したり、彼にMVの監督を任せたこともあるホワイ・ドント・ウィーは、〈サマソニ〉効果もあって日本での知名度も急上昇中。常に比較されてきたワン・ダイレクションとの共通点に関しては「5人組ってこと」、違いについては「僕らは踊ったりもするよ(笑)」とのことだ。

 


ホワイ・ドント・ウィー
ヴァンクーヴァー出身のダニエル・シーヴィ、テキサス出身のザック・ヘロンとコービン・ベッソン、ミネソタ出身のジョナ・マレー、カリフォルニア出身のジャック・エイブリーから成るボーイズ・バンド。YouTubeやYouNowにカヴァー動画を投稿するなど個別で活動していた5人が集まり、2016年に結成。翌年10月にファースト・シングル“Taking You”でメジャー・デビュー。その後、1年間に5枚のEPを配信し、ファン層を広げていく。今年2月にはエド・シーランの手掛けた“Trust Fund Baby”がヒットを記録。〈サマソニ〉での初来日公演も話題を集めるなか、8月31日にファースト・アルバム『8 Letters』(Atlantic/ワーナー)を発表。9月12日にその日本盤がリリースされる。