
より逞しく、より大人になった5人が帰還――セルフ・プロデュースで自作曲を披露する2枚目のアルバムは彼らの真のアーティスト性を雄弁に物語る!
充電の理由
その変化は写真やMVを眺めるだけでも明らかだろう。まだキュートさも残るルックスで人気を集めてきたホワイ・ドント・ウィー(WDW)が、見るからに逞しくなって帰ってきた。筋肉質になったボディーも野性味のあるヘアスタイルも、かつてなく大人びたクールさをアピールするかのようだ。が、そんなイメチェン以上に大きな変化は、音楽への取り組み自体にあった。
ダニエル・シーヴィ、ザック・ヘロン、コービン・ベッソン、ジョナ・マレー、ジャック・エイブリーの5人によるWDWは、2016年にLAで結成されて以来、ルックスの良さもありつつ、その歌声や高水準な楽曲においても評価されてきたグループである。17年の“Something Different”がヒットして飛躍の足がかりを掴むと、〈娘に聴かせたい〉との理由でエド・シーランが書き下ろした18年の“Trust Fund Baby”もそれに続く。そしてモンスターズ&ザ・ストレンジャーズやジョナス・ジェバーグら多数のヒットメイカーを迎えた同年のファースト・アルバム『8 Letters』は全米9位を獲得するスマッシュ・ヒットとなり、その人気は日本へも飛び火することとなった。
19年はその成長を進化へ繋げる年だったと言えるだろう。ダニエル&コービンがライティングに関わった“Big Plans”を皮切りに、WDWはほぼ月刊ペースで新曲を投下しはじめるのだ。なかにはマックルモアとのコラボ“I Don’t Belong In This Club”や再度エド・シーランが提供した“What Am I”もあったが、多くの曲ではメンバーがソングライトを主導。その間には来日公演も成功を収め、ジャックが恋人との間に娘を授かるという私生活での慶事もあった。同年の12月31日には“Chills”を公開。意味深な曲名が示唆していたように、2020年1月に彼らはすべてのSNS更新を停止し、表舞台から姿を消したのだった。
それから……世間がコロナ禍に見舞われるなか、9か月ぶりに更新されたSNSでスタジオでの作業風景が公開され、彼らはカムバックを宣言。4年以上も休みなく活動してきた5人は休息の時間を設け、同時に変化への準備を進めていたというわけだ。そこで届いた新曲“Fallin’(Adrenaline)”はダニエルとジョナ、コービンが共作したナンバーで、プロデューサーにはダニエルと大物エンジニアのジェイセン・ジョシュアがクレジット。MVではダニエルがドラムス、コービンとジャックとザックがギター、ジョナがピアノを演奏していた。
セルフ・プロデュースでの完成度
そう、WDWが約9か月の充電期間に試みたのは、いわゆる〈歌って踊るグループ〉から〈楽器を演奏するバンド〉への転身。しかも従来のように著名プロデューサーやソングライターの楽曲提供ではなく、メンバー主導で曲作りを進めたいという意欲も込めての考えだ。前年の配信シングル群における共同プロデュース/コライト参加はその前ぶれだったわけだが、彼らは一足飛びに自分たちの望む作品作りへと体制を切り替えたのである。そうやって完成したのが今回のセカンド・アルバム『The Good Times And The Bad Ones』だ。

WHY DON’T WE 『The Good Times And The Bad Ones』 Signature/Atlantic/ワーナー(2021)
アルバム全編のプロデュースも先行カットと同様、ダニエルとジェイセン・ジョシュアが共同で担当。ほとんどの曲でダニエルは鍵盤とギター、プログラミング、さらにはエンジニアリングまでも担当しており、そのリーダーシップぶりには目を見張る。もともと15歳の時にオーディション番組「アメリカン・アイドル」ファイナリストとして脚光を浴びた彼は、並行して20種類以上の楽器演奏に習熟してきた才能の持ち主。先述の“Fallin’(Adrenaline)”ではカニエ・ウェスト“Black Skinhead”からサンプルしたドラム・ビートで新生WDWの勢いを強調しているが、こうした意匠も彼のアイデアなのかもしれない。
サンプリングという意味では続く“Slow Down”もおもしろく、ここではスマッシング・パンプキンズの名曲“1979”がメロウに引用されている。ドラムを叩くのはMGKなども手掛けて好調なトラヴィス・バーカー(ブリンク182)で、彼は乾いた雰囲気のポップ・ロック“Lotus Inn”とディープで妖しい“Look At Me”でもプレイ。キャリアのある助っ人という意味では、緩急あるアンビエント・ベース“For You”にスクリレックスが、アトモスフェリックな“Stay”にティンバランドが、それぞれ助力しているのも注目だろう。他にはドンテ・ウィンスロウがストリングスを仕立てた美麗なスロウ“Grey”では西海岸R&Bの重鎮ケネス・クラウチがピアノを弾き、ミュージシャンではファレル作品で著名なギタリストのブレント・パシュケも要所で援護している。
とはいえ、そうした布陣を取り立てて強調する必要がないほど、5人のやりたいことは定まっていたようで、どの曲を聴いてもWDWならではのブレない個性が浮かび上がるのだから凄い。今後はメンバー各々の志向や特性がもっと表に出てくるはずだし、完全なバンド演奏による楽曲も期待できるだろう。予想外の完成度の高さという嬉しい裏切りもあって、この先のWDWがさらに楽しみになってきた。
関連盤を紹介。
左から、ホワイ・ドント・ウィーの2018年作『8 Letters』(Signature/Atlantic)、楽曲を提供した2019年のサントラ『Ugly Dolls』(Atlantic)、スマッシング・パンプキンズの95年作『Mellon Collie And The Infinite Sadness』(Virgin)、ブリンク182の2019年作『Nine』(Columbia)