もっとも身近なライヴァル
レコーディングは、基本的に一発録り。スキルフルなメンバーが揃っているという理由に加え、ライヴの爆発感を損なわずにパッケージしたいというメンバーの意思が、この生々しいサウンドに結実している。
「ほとんどの曲がライヴを経てきてるので、録ったものに関しては全然こだわらなかったですね。“tokyo class”はスライ&ザ・ファミリー・ストーンっぽいコード進行をサンプリングした感じで、クリックを外してやったら凄く感触が良かった」(MELTEN)。
「MELTENさんは勘が鋭くて、〈クリック外してみようや〉とか言って、演奏をリードしてくれて、3回目ぐらいでほぼ無修正の良いテイクが録れました。これはアルバムで唯一サポート入れずに4人だけでやってる曲ですね」(TSUUJII)。
MVも撮られたリード・トラック“m'n'dass”は、アルバムのなかでも飛び抜けて攻撃的な高速ドラムンベース+ロックンロール。ベースのYUKIが弾くゴリゴリの重低音ベースを筆頭に、レゲエ風の中間部ではエキゾティックなピアノ・ソロが色を添え、全編通してサックスが暴れ回る、超ハイテンションな一曲だ。
「この曲はYUKIさんがベースラインとリズムを考えてくれて、5月のライヴで新曲としてやったんですけど、その時は手探りで〈まあまあ良かったんちゃう?〉ぐらいの感じが、ユウキさんが構成を練り直してくれて、めっちゃ良くなった」(TSUUJII)。
「TUUJIIのサックスがロングトーンを生かしたメロディーだったから、ピアノはそれにインスパイアされたメロディーを弾いてる。メロディーは基本的に全員の共同作曲ですね」(MELTEN)。
そんな個性豊かなオリジナル曲が並ぶなか、ひときわ耳を惹くのが、アヴィーチーのカヴァー“wake me up”。カントリー・ミュージックのエッセンスを取り込んだ異形の名曲を、メロディーの良さにスポットを当てて見事に再生させている。
「数年前にCalmeraのマネージャーがEDM入門編としてアヴィーチーを教えてくれて、すごくイイなと思ったから、提案してみたんですね。そしたらMELTENさんもたまたまソロのライヴでこの曲をやっていて、ふたりの考えが一致した。ほかのメンバーはあんまりEDMを通ってないと思うんですけど、ライヴの感触がすごく良かったのと、アヴィーチーが亡くなったこともあって、これはCDに入れるしかないなと」(TSUUJII)。
「アヴィーチーは、他のEDMのクリエイターとは視点が違う気がして、カントリーをミックスしたり、メロディーが凄く刺さるんですよ。ピアノでメロディーを弾く曲が、アルバムを通してそんなにないから、おもしろいアレンジになりました」(MELTEN)。
このCDデビューをきっかけに、バンドは達成目標を上方修正。インスト音楽のトップを極め、さらにその先へ進むために、まずはもっとも身近な〈ライヴァル〉を超えたいと、隣を見ながらTUUJIIは力強く語ってくれた。
「CDが売れない時代と言われだして何年やという感じですけど、僕らのジャンルに関してはそうではないことを、fox capture planの成功が証明してくれた。あとは追い付け追い越せで、僕らもできるはずだと思ってます」(TSUUJII)。
「すごいな、俺、秋元康みたいになってるの?」(MELTEN)。
「自分自身でライヴァルを作って盛り上げる(笑)。でも本当にPOLYPLUSに関してはfoxを抜くまで、CDが売れない時代やからという言い訳は通用しないし、する必要もないと思ってますんで」(TSUUJII)。
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