あのクルレンツィス率いるムジカエテルナでフォルテピアノを担当、〈ダ・ポンテ・オペラ〉での通奏低音で存在感を示し、ソナタ・アルバムも録音、指揮はロジェストヴェンスキーに学び、2018年初来日で東響に客演。1988年生まれの眉目秀麗、白皙の天才。多士済々の古楽オケ、イル・ポモ・ドーロを率いての古楽領域での録音が主だったエメリャニチェフが、ついに“英雄”で指揮者としての全貌を刻んだ。1990年設立の室内オケを〈HIP(Historically Imformed Performance)〉で統率、軽快かつ鮮やかにこの飛躍的傑作を音化している。聡明鋭敏な音楽にむしろ温かな赤味を差す弾力的で精彩に富む響きのまとめ方が、実にきめ細やかで美しい。
マクシム・エメリャニチェフ(Maxim Emelyanychev)『ベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》、ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲』 軽快かつ鮮やかな飛躍的傑作
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