All Day And Night
レイとの“You Don't Know Me”からトーヴ・ローとの“Jacques”に至るまで、カラフルなビッグ・チューンを連発してきたUKの新たなダンス・センセーションがさらに彩りを増した待望のフル・アルバムを完成! スナッキーで踊ろう! 

快進撃の軌跡が辿れる一枚

 ビギーやティンバランドをはじめとするヒップホップやフェラ・クティに興味を持ち、音楽制作を行っていたジャックス・ジョーンズの転機はデューク・デュモンとの出会いで、2014年に彼との共作でリリースしたトロピカルな特大サマー・アンセム“I Got U”(全英チャート1位、USダンス・チャート1位)がヒットしたことによってキャリアを一変させたのはご承知の通りだ。そんな彼にとって初のオリジナル・アルバムとなる『Snacks』は、2015年に発表した“Yeah Yeah Yeah”から最近のヒットまで収めた快進撃の軌跡を辿ることのできる一枚となっている。

 一般的なジャックスのイメージは、ディスクロージャー、ジョナス・ブルー、クリーン・バンディットをミックスしたようなダンス・ポップという印象だと思うが、マーティン・ソルヴェグとのトランシーな“All Day And Night”、デミ・ロヴァート&ステフロン・ドンをフィーチャーしたカーニヴァルの祝祭感が賑々しい“Instruction”、マイク・ダンとMNEKを従えてオールド・スクール・ハウスへと回帰した“House Work”など、アルバムを通して聴くことで多彩なアイデアとアプローチ、ビートや楽曲に備わったライヴ・フィーリングに気付かされるはずだ。それはDJ/プロデューサー/ソングライター/マルチ奏者という音楽家としての資質がなせる技であり、この先への期待もいやがうえにも高まる。 *青木正之

 

ディープ・ハウス色がもたらした疾走感と統一感

 2014年にデューク・デュモンにフックアップされる形でリリースした“I Got U”で全英チャートを制し、同年のグラミーにもノミネートを果たしたロンドン出身プロデューサー、ジャックス・ジョーンズのファースト・アルバムが満を持して到着。前出曲は当時のシーンのトレンドを受けたカリビアン・テイストのトロピカル・ハウス曲だったが、本作では多彩な顔ぶれの客演陣と多様なアレンジの楽曲を揃え、さらに既発シングルの“House Work”や“Ring Ring”を加えた、名刺代わりというには十分すぎる内容になっている。

 デミ・ロヴァートの力強い歌唱とステフロン・ドンの掛け合いを見事に演出したラテン・キラー“Instruction”やビービー・レクサの艶っぽさを活かしたスロウ・チューン“Harder”など、一聴して華やかな楽曲だけではなく、イヤーズ&イヤーズをフィーチャーした“Play”やジェス・グリンを迎えた“One Touch”とそれに続く“All 4 U”といった、彼のルーツであろうディープ・ハウス色の濃いサウンドがアルバム全体に疾走感と統一感を与えている。現行シーンで息の長い活躍をめざすには傑出した個性ももちろん大事ではあるが、本作のように変幻自在のアレンジメントでバランスの取れた作品に仕上げる能力もまた重要で、そうした点でも今後に大いに期待が持てそうだ。 *藤堂てるいえ