Photo:Jean Baptiste Millot

知られざるスペインのピアノ音楽の名演を日本独自企画としてリリース!

 ピアニスト、ホアキン・アチューカロは、録音全盛の現代にあって、多くの人が口にする名ではないかもしれない。1932年、スペイン、ビルバオの生まれだから、来年には米寿。そんな年齢でも、今年は一月と九月の二回、来日し、リサイタルを開いている。そうか、聴きたかったな――とおもっていた矢先、突然、二枚組のリリースである。このアルバムはスペインものをまとめたもので、うんうんと、聴きながらうなずくこと何度も、だった。

JOAQUIN ACHUCARRO 火祭りの踊り&ゴイェスカス~スペイン音楽名演集 Sony Classical(2019)

 グラナドス、モンポウ、ファリャ、アルベニスといった十九世紀末から二十世紀はじめにかけてのスペインの作曲家たち。中心となるのはグラナドス《ゴイェスカス》全曲とファリャの作品か。だが、もしこうした作品にあまり馴染みがないなら、とても有名な、誰でも知っている《火祭りの踊り》とか 《マラゲーニャ》とかを聴いてみればいい。よく知っているからこそ、ちょっとした違いもわかるかもしれない。譜面に書いてあるのとはほんのちょっとリズムやテンポが揺れ、間があく、そんなところに、あ、こういうふうなのか、と納得したり、驚いたり。音符はたどれて、それなりにかたちにはなる。でも、こういうふうにはならない、できない。すくなからぬ演奏家が弾くのでも、こんなふうにはなっていない。では、どっちが? もちろん多数決ではないし、正しさが問われているのでもない。そのうえで、説得されるのだ、この演奏には。そして、個人的には、だが、すこしテンポをはやめにとった、ただ1曲のモンポウとか、《ゴイェスカス》の複数の声部のからみ、ふっと浮きあがってくる内声のリズム、構成の妙といったところに惹かれる。

 録音は1970年。そして、ブックレットには複数のライナーノートが収められ、このピアニストについてのみならず、上記の作曲家たちについての情報も充実。これから、スペインのピアノ音楽を聴いてみようと言う人がいたら、これを勧めよう。そうおもう。