深みを増してスケールアップした劇中歌+豪華アーティストによるエンド・ソングで、ファン納得の完成度!

Original Soundtrack アナと雪の女王 2 オリジナル・サウンドトラック Walt Disney Records(2019)

今年一番の(そして2020年まで続く)大ヒットが期待されるサントラといえば「アナと雪の女王2」だろう。前作「アナと雪の女王」は世界を席巻し、アニメーション映画史上のあらゆる記録を塗り替え、街中に“レット・イット・ゴー”のメロディがあふれた。はたして今作は、それを超えることができるのだろうか。

「アナと雪の女王」が社会現象を巻き起こした要因をあげれば、キリがない。アナとエルサという2人のヒロインはとびきり魅力的だし、ストーリーはドラマティック。かつてのディズニー映画のように、わかりやすい善と悪の対決にしなかったことや、ロマンスを作品の軸に据えなかったことも観客から支持された。が、ブームを牽引したのは、なんといっても音楽だ。

劇中で歌われるミュージカル・ナンバーの作詞・作曲を手掛けたのは、ロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペスという夫婦のソングライターチーム。夫のロバートはブロードウェイのミュージカル界で活躍してきた人物で、「アベニューQ」(2003)と「ブック・オブ・モルモン」(2011)で演劇界最高の栄誉であるトニー賞を受賞。グラミー賞やエミー賞にも輝いており、2014年のアカデミー賞で“レット・イット・ゴー”が主題歌賞を受賞したことで、ショウビズ界の4大アワード〈EGOT〉(Emmy/Grammy/Oscar/Tonyの略)を史上最年少の39歳で制覇する快挙を成し遂げた。

さらにロバート・ロペスは、2018年にディズニー/ピクサー映画「リメンバー・ミー」の主題歌“リメンバー・ミー”で2つめのオスカーを獲得。4大アワードをすべて2回ずつ受賞するという史上初の〈ダブルEGOT〉を達成している。感動的なバラードであっても、コミカルな曲であっても、彼の音楽は耳にこびりついて離れない。ひと言でいえば、音楽で人の心をつかむ天才なのだ。

一方、妻のクリステンは女優からソングライターに転身し、2005年ごろから夫ロバートと組んで、ディズニーを始めとするさまざまなプロジェクトで才能を発揮。夫婦のどちらも作詞・作曲にクレジットされているが、とくにクリステンはストーリーに深く関わり、ウィットにあふれた歌詞を書くことで知られている。

ディズニー映画において、ソングライターは単に〈曲を書く人〉ではなく、製作の初期段階から参加し、脚本家と一緒にストーリーを作り上げていくのが、1937年の「白雪姫」からの伝統だ。歌詞はセリフの一部であり、登場人物の言葉にできない想いを伝え、ストーリーを前に進めるものでなければならない。それゆえに、物語を伝える能力が強く求められる。子供たちが一緒に歌える言葉や表現を使いながら、大人にはより深い意味を感じさせるような歌詞、そして世界中の観客の共感をさそう歌詞を書くことができるのが、ロペス夫妻なのだ。「アナと雪の女王2」では、新たに7曲のミュージカル・ナンバーが書き下ろされた。劇中歌“イントゥ・ジ・アンノウン”は、エルサが戸惑いながらも未知の世界へと踏み出そうとする曲で、エルサ役のイディナ・メンゼルが圧巻の歌唱力を披露。彼女は映画のクライマックスでも、鳥肌もののドラマティックなナンバーを聞かせてくれる。

また、雪だるまのオラフ(ジョシュ・ギャッド)がブロードウェイ調に歌い上げるコミカルな曲も健在。前作では歌の実力を存分に発揮するチャンスのなかったクリストフ(ジョナサン・グロフ)にも、ロック・バラード調のソロ・ナンバーが用意された。歌い手の魅力を100%引き出す曲作りも、ロペス夫妻のすばらしい才能のひとつ。

とくにファンを驚かせるのは、アナ(クリステン・ベル)が歌う“わたしにできること”だろう。この曲では、アナの成長ぶりに涙を誘われるはずだ。物語の設定は前作から3年後とあって、今作ではキャラクターたちの人間的な成長が描かれる。映画の世界観はより壮大でミステリアスになり、ストーリーは深みを増した。それが音楽にもみごとに反映されている。

さらに今作では、エンドクレジット用に3組のアーティストが劇中歌をカバー。パニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリーがぶっちぎりの高音(イディナと同じキー)で歌う“イントゥ・ジ・アンノウン”を始め、グラミー賞に輝くカントリー界の歌姫ケイシー・マスグレイヴスと、日本でも絶大な人気を誇るウィーザーが参加。それぞれ独創的なアレンジで、楽曲の魅力を引き出してくれる。そしてもちろん、前作では英語版を上回る人気をみせた松たか子(エルサ役)、神田沙也加(アナ役)らの日本版キャストによる日本語歌も収録されており、ファン納得の充実度。どこまで記録を伸ばすかは今後のお楽しみだが、完成度からいえば、前作をしのぐサントラになったことは間違いない。


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